新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を巡って、中国政府が自らの正当性を誇示するために欧米の対応の甘さについて批判を強めている。世界中が新型肺炎対策に追われて弱っているときに、「中国=権威主義が正しい」としつこく言われ続けたら、それを信じる人が増えてしまうかもしれない。そこで注目すべきは、中国のような強権的手法を用いずに、コロナの感染者・死亡者数を抑え込んでいる日本だろう。欧米が崩れつつある今、日本は自由民主主義陣営の最後のとりでとなっているのかもしれない。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
中国が新型肺炎の国内終息を
事実上宣言したが…
中国外務省の趙立堅報道官は3月13日、ツイッターで「米軍が武漢にコロナウイルスを持ち込んだ可能性がある」と投稿した。趙報道官は、米国は透明性を持って、最初の感染者確認の時期や病院の名前、現在の感染者数を公開し、中国に説明する義務があると書き込んだ。
中国国家衛生健康委員会は3月19日、武漢市・湖北省を含めて18日に中国国内で発生した新規感染例が「ゼロ」だったと発表した。新型肺炎は、中国・湖北省武漢市で発生して拡散。19日時点での中国国内の累計感染者数は8万0928人。死亡者は3245人に達していた(『新型コロナウイルス、現在の感染者・死者数(19日午後8時時点)』. AFP)。だが、国内での新型肺炎の拡散は終息したと、事実上宣言したのだ。
一方、新型肺炎は欧州や米国に猛烈な勢いで拡散している。NHKがまとめた「感染者多い国や地域(23日午前2時)新型コロナウイルス」によると、イタリアでは、感染者が5万9138人、死者が中国を上回る5476人に達し、致死率が9%超と完全な「医療崩壊」を起こした。フランスやスペイン、ドイツなどでも感染者が増加し、世界保健機関(WHO)が「パンデミック」を宣言した。そして、新型肺炎の発生後、早々に中国からの入国を禁止していた米国でも感染が広がり始め、ドナルド・トランプ米大統領が「国家非常事態」を宣言した。