大手住宅メーカーである積水ハウスの和田勇前会長兼CEO(最高経営責任者)らは2月中旬、同社の経営陣刷新を求める株主提案を行った。自身を含む11人の取締役候補の一括選任を4月の定時株主総会で求めるものだ。他の株主からすれば、株主提案によって業績や株価が上がるか否かが通常の関心どころ。和田氏らは「ガバナンス不全」を指摘し、ガバナンスを強固にすることを目的としており、儲けを確信する判断材料としては弱い。ただ、近年は年金基金などを中心にESG(環境、社会、ガバナンス)の観点で投資先を選ぶ機関投資家が増えている。その観点を第一としたときに、堅調な業績を出している現経営陣、ガバナンス不全を訴える株主提案側のどちらを支持するか――。前編に続き、和田氏に加えて、株主提案側の取締役候補に名を連ねた勝呂文康取締役専務執行役員(現職)、マネーロンダリングに詳しいクリストファー・ダグラス・ブレディ氏とESGの専門家であるパメラ・フェネル・ジェイコブズ氏が応じたダイヤモンド編集部との単独インタビューをお送りする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 臼井真粧美、重石岳史)

ESG観点の投資家と接触
「もっと知りたい」の声

――今回の株主提案について、どういった人たちに働きかけていくのでしょうか。

ブレイディ氏 積水ハウスの株主の約20%を占める米国、海外投資家のことを私たちはよく知っていますし、加えて日本の機関投資家と話していきます。

クリストファー・ダグラス・ブレディクリストファー・ダグラス・ブレディ/1954年生まれ。米チャート・グループ会長兼CEO。安全保障、リスクマネジメント、マネーロンダリング防止に経験と知見を持つ。ジョージ・ブッシュ大統領のニュージャージー州選挙責任者などの経歴を持ち、米国政府に近い人物。和田氏とはかねての知り合い Photo by Toshiaki Usami

――日本の大株主には、年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人。GPIF資料に基づく2019年3月末時点の状況)がいます。GPIFは投資運用先について、非財務情報であるESG(環境、社会、ガバナンス)要素を考慮している。積水ハウスはESGを重視する経営であることを強調してきたのに、株主提案は「ガバナンス不全」と断じた。ESGのG(ガバナンス)は偽りの状態ということですか。

ジェイコブズ氏 その通り。ESGのE(環境)については良い。S(社会)についてはちょっとまだ定かではないですが、積水ハウスのエコフレンドリーな建物、環境の尊重、地域に関与して仕事をしていく姿勢などは、高く評価できる。対して、G(ガバナンス)はかなり問題を抱えていると認識しています。ガバナンスが足を引っ張っているというのは残念です。

(編集部注:株主提案では、積水ハウスの人事・報酬諮問委員会は地面師事件の責任に関し、阿部俊則会長〈当時社長〉を解任すべきと判断したが、これが無視され現経営陣による会社支配が続いていること、事件の調査報告書の全面公表に抵抗する情報隠蔽行為により、「ガバナンス不全」に陥っていると断じた)

――今の経営体制を継続すると、ESGの観点で選んできた投資家たちは離れていくのでしょうか。