ビートルズの最後から2番目のアルバム「アビイ・ロード」の50周年記念として、昨年(2019年9月)はドルビー・アトモスなどの多チャンネル・ハイレゾ盤が発売された。そして今年(2020年)はビートルズ最後のアルバム「レット・イット・ビー」の50周年である。ハイレゾ・サラウンドによる驚愕のサウンドを期待していたら、何も発売される気配がないのでがっかり。しかし、なんとピーター・ジャクソン監督が1969年1月の録音風景を撮影したフィルムをベースにして、新しい映画を制作したのだそうだ。これは大いに期待できる。(ダイヤモンド社論説委員 坪井賢一)

ビートルズ最後のアルバムから50年
事実上の解散まで複雑な軌跡

ビートルズPhoto:PIXTA

 旧作の映画「レット・イット・ビー」は1970年5月にイギリスで公開されているが、ピーター・ジャクソン監督の作品は旧作の修復版ではなく、新しく制作したらしい。当時の未公開フィルムを最新の技術で補正して作られた劇場映画である。ジャクソン監督の映像表現は天下一品で、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ(アカデミー監督賞受賞)や「ホビット」シリーズで目を見張る成果を出している。

 1969年1月の録音・撮影から70年5月にアルバム「レット・イット・ビー」がイギリスで発売されるまでのビートルズの動向は複雑でわかりにくい。4人それぞれのソロ作品の発売も並行していたので、それらを合わせて時系列で整理すると以下のようになる。

【1969年】
1月2日
 電子的な重ね録音ではなくバンドのサウンドによるアルバム制作を企図し、同時に録音風景の映画撮影を開始した。これを「ゲット・バック・セッション」という。

1月30日
 アップル本社ビルの屋上で予告なしに「ルーフトップ・コンサート」開催。これは映画撮影の一環だった。

4月11日
 シングル盤「ゲット・バック」発売、しかしアルバム制作は頓挫。

5月30日
 シングル盤「ジョンとヨーコのバラード」発売。

7月1日
「ゲット・バック・セッション」を放置し、新しいアルバム「アビイ・ロード」の制作開始。

7月4日
 ジョン・レノンがシングル「平和を我等に」発売。

9月26日
 アルバム「アビイ・ロード」発売。

10月20日
 ジョン・レノン(プラスティック・オノ・バンド)がシングル「コールド・ターキー」発売。

10月31日
「アビイ・ロード」のシングルカット「カム・トゥゲザー/サムシング」発売。

【1970年】
2月6日
 ジョン・レノン(プラスティック・オノ・バンド)がシングル「インスタント・カーマ」発売。

3月6日
 シングル盤「レット・イット・ビー」発売。

3月27日
 リンゴ・スターがソロアルバム「センチメンタル・ジャーニー」発売。

4月7日
 ポール・マッカートニーがソロアルバム「マッカートニー」発売。

4月10日
 ポールがビートルズ脱退を表明、事実上解散。

5月8日
 アメリカ人プロデューサー、フィル・スペクターが「ゲット・バック・セッション」をリミックスし、管弦楽の付加録音などによってアルバム「レット・イット・ビー」を完成、イギリスで発売。

5月20日
 イギリスで映画「レット・イット・ビー」公開。

6月5日
 日本でアルバム「レット・イット・ビー」発売。イギリス盤と日本盤の初版はボックスセットで、録音風景の豪華なカラー写真集「THE BEATLES GET BACK」が同梱されていた。

8月25日
 日本で映画「レット・イット・ビー」公開。