転職サイト「ビズリーチ」などを運営する巨大スタートアップ、ビジョナル。『突き抜けるまで問い続けろ』では創業後の挫折と奮闘、急成長を描いています。ビジョナル創業者、南壮一郎氏の経営に大きな影響を与えた人物。それが楽天グループ代表の三木谷浩史氏。三木谷氏は日本にも「ブレーキが壊れていることを称賛する文化」が必要だと語っています。(聞き手は蛯谷敏)

■インタビュー1回目▶「楽天グループ代表三木谷浩史氏「アントレプレナーだけが、世の中を変えられる」」
■インタビュー2回目▶「楽天グループ代表三木谷浩史氏「成功するには100%じゃ足りない。120%出し切る」」
■インタビュー3回目▶「楽天グループ代表三木谷浩史氏「僕の場合、ブレーキが壊れている。勝つまでやり続ける」」
■インタビュー4回目▶「楽天グループ代表三木谷浩史氏「僕にとっておもしろいはfunではなくfulfilling(充実)」」

楽天グループ代表三木谷浩史氏「日本にもブレーキが壊れていることを称賛する文化を」Photo: Adobe Stock

――ビジョナル創業者の南壮一郎さんも含めて、三木谷さんの薫陶を受けた起業家が社会で活躍するようになってきました。

三木谷浩史氏(以下、三木谷):先日も政府の方に言ったんですが、なかなか自動車会社が、テスラのようなものをつくれていません。あれはやっぱり、ベンチャー企業でアントレプレナーだからできているんです。医療にしても同じでしょう。

 うちにもいますが、そういうことに挑戦する人たちは、ネジが2、3個抜けていますよね、完全に(笑)。スティーブ・ジョブズしかり。イーロン(・マスク)もマーク(・ザッカーバーグ)も、ジェフ(・ベゾス)もみんな、私以上にブレーキが壊れているんじゃないか、と。

 そして、ブレーキが壊れていることを称賛する文化が、アメリカにはある。翻って日本の経済界は、どちらかというと、短期的な売り上げが上がった、利益が下がった、という目先のことばかりで一喜一憂している。

 そういう意味においては、やっぱりアントレプレナー、僕のいう「トゥルー・アントレプレナー」が日本を変え、日本をもう一度世界の舞台に連れていく。南さんにも、それぐらいの気合で頑張ってほしいなと思います。

 あとは、仲間を大切にする必要もあります。楽天というのは、やっぱり僕だけの会社じゃないんです。僕の周りにいる経営陣が、全員一級品で、彼らがビジネスをドライブしているんです。いろいろなバックグランドの人が集まって、どんどん新しい仕組みができています。

――今後ビジョナルも海外事業に再び挑戦するかもしれません。

三木谷:グローバルにギアを上げるのは、結構、大きなチャレンジかもしれませんよね。別に日本国内だけでやっていてもいいわけだし。海外に出るのは、いろいろな方法があると思うんですが、主体的に世界に出ていこうとするのであれば、組織そのものの国際化が必要になるはずです。

 いつも言っていますが、「木を見て森も見ろ」と。木を見て森を見ずではダメで、森ばっかり見て木を見ていないのもダメ。スキーのように足元も気にしながら遠くを見ろ、ということです。

 今、時代は、すさまじいトランスフォーメーションのまっただ中にあって、やっぱり5年、10年後の世界を俯瞰しながら、日本という足元を見ながら、大きな世界というのを見る必要があります。

 じゃあ、そこに行くためにはどうするかというのを大言壮語じゃなくて、実際にエグゼキューション(執行)をどう実現していくかを考え、それに対する陣形も整えていくということが重要なんです。

 南さんが僕のことを慕ってくれるのは非常にうれしいことですけど、同時に自分のスタイルをつくり上げることも重要ですよね。

――南さんにアドバイスはありますか。

三木谷:そうね。あんまりビジネスの話をしたことはないけれど、そうだな。うーん、アドバイス……。

 ………。

「気合を入れてやれ」と言っておいてください。偉そうなことを言っていますけど、しょせん体育会系なので、僕も(笑)。(談)

■インタビュー1回目▶「楽天グループ代表三木谷浩史氏「アントレプレナーだけが、世の中を変えられる」」
■インタビュー2回目▶「楽天グループ代表三木谷浩史氏「成功するには100%じゃ足りない。120%出し切る」」
■インタビュー3回目▶「楽天グループ代表三木谷浩史氏「僕の場合、ブレーキが壊れている。勝つまでやり続ける」」
■インタビュー4回目▶「楽天グループ代表三木谷浩史氏「僕にとっておもしろいはfunではなくfulfilling(充実)」」

楽天グループ代表三木谷浩史氏「日本にもブレーキが壊れていることを称賛する文化を」
楽天グループ株式会社代表取締役会長兼社長の三木谷浩史

 今回、紹介したエピソードのほか、ビジョナルの創業ノンフィクション『突き抜けるまで問い続けろ』では、起業の悩みから急拡大する組織の中で生まれる多様な課題(部門間の軋轢や離職者の急増、組織拡大の壁)に、ビズリーチ創業者たちがどう乗り越えてきたのかがリアルに描かれています。