日本橋三越コロナ禍で窮地の百貨店の経営陣は、十分な危機感を持っているのか Photo by Satoru Okada

新型コロナウイルスの感染拡大で深刻な経営状態にある百貨店業界。トップは危機の今こそ社員を鼓舞し、新たなビジネスモデルを提示すべきだが、物足りない。子会社での成功体験にこだわる三越伊勢丹ホールディングス、長老会長をめぐって内紛の兆しが見える高島屋に未来はあるのか。(リテールジャーナリスト 村上達也)

売り上げ大幅減の昨年からさらに減
ワクチン普及でも回復は困難か

 新型コロナウイルスの猛威が止まりません。東京都では9月に入ってようやく新規感染者数が下落傾向となりましたが、百貨店業界の打撃は壊滅的です。

 8月の各社の売上高を見ると、前年同月比で三越伊勢丹ホールディングス(HD)がマイナス10.8%、高島屋がマイナス9.1%、大丸松坂屋百貨店などJ.フロントリテイリングの百貨店事業がマイナス5.2%、エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下の阪急阪神百貨店がマイナス15.6%といった惨状です。

 しかもこれは、前年同月比です。昨年8月は各社、コロナ前の19年8月より2~3割程度減収となっていましたから、いかに厳しい状況であるか、おわかりいただけるでしょう。

 まさに非常事態であり、頼みの綱だったワクチンの接種率が8割に達しても感染が急拡大するシンガポールのような例もあるように、消費者の感染への不安が解消されて反転攻勢につながる「光が見えて来た」とは、到底言える状況ではありません。

 ですから、各社のトップは将来のあるべき姿を示し、ボーナス激減の憂き目にさらされ、不安を抱える従業員を鼓舞して引っ張っていかなければならないのですが、業界関係者に話を聞きますと、どうも心もとない。幹部同士でギスギスしていたり、現場とズレた指示を発して「笛吹けど踊らず」に陥っているようなのです。