脱炭素地獄#11Photo:123RF

脱炭素とデジタル化の進展で半導体の重要性は増している。政府は、現在の世界シェアを維持するだけで5兆円の追加投資が必要との見方を示すが、凋落した日の丸半導体を復活させるためには、それを上回る巨額投資が必要となるのは明白だ。特集『脱炭素地獄』(全19回)の#11では、台湾TSMC誘致に続く復活の「切り札」を探る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

半導体企業は公然と政府支援を要求
日本はTSMC誘致に続く追加支援の調整へ

「米国を含め、世界の政府との協力を楽しみにしている」

 米半導体大手マイクロン・テクノロジーのサンジェイ・メロートラ最高経営責任者(CEO)は10月20日、今後10年間で半導体メモリーの生産拡大と研究開発に1500億ドル(約17兆円)超の巨額投資を行う方針を表明した。

 ここで強調したのが「政府による資金援助や税額控除」だ。半導体メーカーが公然と政府支援を要求する事態となっていて、もはや巨大化する半導体の投資は、政府の支援なしでは成り立たなくなっている。

 すでに各国間では政府の半導体支援競争が過熱している。米国では、台湾TSMCの新工場を含めて自国の半導体製造能力を強化するため総額5.7兆円を投じる支援法案が上院を通過。中国では中央・地方政府による10兆円を超える半導体ファンドの支援があり、欧州連合も半導体を含むデジタル分野に今後2~3年で19兆円を投資する計画だ。

 この潮流の中で日本では、1年以上の交渉でTSMCの誘致にこぎ着けた(詳細は本特集の#1『ソニー×TSMC構想の裏にトヨタと経産省、日の丸半導体「一発逆転計画」綱渡りの内実』参照)。熊本県の新工場の「総額1兆円の設備投資」の半分を補助金で支援する方針だ。だがそれでも、「日の丸半導体の復活」にかかるコストとしては全く足りない。

 米欧中に対抗できる巨額の支援策を打ち出せるのか。政府内部では水面下の調整が始まっている。その内情を明かしていこう。