文化祭の模擬店を株式会社に設定し、半年の準備期間をかけて学習に取り組む起業体験プログラム  写真提供:品川女子学院

起業家マインドのある女性リーダーを育てる

――女子のアントレプレナー(起業家)を育てるような学校は本校の他にはないよ、といつも言っています。向き不向きはあるとは思いますが。

 本校は文科省スーパー・グローバル・ハイスクール指定校の研究テーマも「起業家マインドのある女性リーダーを育てる」としていました。日本の最大の社会問題は人口減少です。まだ生かしきれていない女性が起業することで、自分の仕事だけでなく他人の雇用も生むことができれば、レバレッジが利きますね。

 また、女性起業家に起業のメリットを聞くと、「自分でタイムマネジメントできるので家庭と両立しやすい」という方もいます。女性の社会進出も進み、購買の意思決定者も女性が増えてくるでしょうから、女性が起業をすることの意義は広がると予想しています。

 といっても、本校は起業そのものを目的にしているわけではなく、組織の中でも地域でも、みんなが困っていることや、あったら便利なことを見つける力を身に付け、それを解決するための一歩が踏み出せるような気持ちを育てることが目標です。だからあえて「起業マインド」と言っているんです。

――他校でまねをするところも出てくるのではないですか。

 それは構いません。うまくいったことはむしろシェアするようにしています。自分たちも困ったときは他校や校外の方々に助けられてきましたので。また、企業の取り組みも「学校だったらどうするか?」とベンチマークして、たくさん取り入れさせていただきました。

 本校は「失敗ともめ事」を大事にする学校と言い続けているので、それを分かって入学してくださるご家庭がほとんどで、良いと思ったことはリスクを取ってチャレンジしやすい環境にも恵まれています。保護者会などでも、「6割ゴーでやりますから、失敗したらかばってくださいね」などど、お話ししています。

 コロナ禍のオンライン授業もいち早く取り組みましたが、そこで得たノウハウを教育関係者の方々とシェアするオンラインイベントも主催しました。ノウハウをオープンにして、差別化ができなくなってきたらどうするかとよく聞かれますが、ちょっと悔しいくらいのことがあると、さらに工夫をしたくなるという効果もあります。

――新しいチャレンジを成功させる秘訣は何でしょうか。

 できない理由を探さないことだと思います。うまくいったあちらとうちは違うから、と。同じ条件の組織は二つとないので、どうやったらできるかと考えてきました。

――他にはいかがですか。

 いまあるリソースで考えないこと。人はどうしても、いま目の前にあることだけで「できる、できない」を考えてしまいがちです。でも、いまこれがないから準備してからやろうでは、タイミングを逃します。みんなのためになると思える目的さえ持っていたら、言葉に出してとりあえず始めてしまうと、不思議と情報が入ってきたり、手伝ってくれる人が現れたりしました。

 また、最初の一人がいるかいないか、も大きいと思います。トップが変われば早いのでしょうが、私のように20代で何の経験も立場もない人間だからこそ、やると決め、なんとかやり方を工夫して、やり続けていると、仕方ないなぁと助けてくれる人が出てきました。方法論でぶつかっても、生徒が大事という価値観を共有していたので、結果、現有勢力で力を合わせ、理念を変えず共学化もせず、ここまでやって来られました。

>>(3)に続く