田中校長による英語のアクティブ・ラーニングの授業に集まった栄東の高校生たち

基礎・基本の徹底が生徒の力を生み出す

――中1の2学期からは何をやるのですか。

田中 夏休みが明けたら、覚えた文法事項やフレーズを応用してさまざまな文章を作り、フォニックスを意識しながら本格的にスピーキングのトレーニングをします。初期の段階からフォニックスをしっかりやっておくと、英語のリスニングの際にも音の区別がつきます。自分で発音できない音を正確に聞き取ることは困難でしょう。

 ただ、栄東の英語の授業では、きれいな発音でペラペラしゃべることを最終的な目的としているわけではありません。同時に、話す内容も非常に大事です。そのためには、小学生の間は、むしろ国語の学習をしっかりやってきてほしいです。概要を的確に捉える力や論理的な思考力はあらゆる教科のベースになります。

 いまの生徒たちがSociety5.0といわれる社会に出たとき、テクノロジーやAIに使われる方ではなく、それらを使いこなす人材となるためにも、中高6年間をかけてじっくり育む教科横断的な読解力の必要性を強く感じます。

 とはいえ、知識のリソースがないと、アクティブ・ラーニングは絵に描いた餅になります。ですから、基礎力をつけるため何回も何回も同じことを繰り返し学びます。一見無駄に見えるかもしれませんが、繰り返しやることで反射的なスピード感がつきます。その真に身につけた知識と、他の知識をつなげられるようになって初めて、新たな発想を生むことができるのではないでしょうか。知識をため込むだけであれば、私たち人間はどうあがいてもコンピューターにはかないません。ただ、知識と知識をつなげ、それを知恵へと昇華させ、新たな価値を創出することが人間にはできます。

――アクティブ・ラーニングにはいくつかのやり方がありますが、英語で行うものが生徒も自分の学習成果が実感できて、一番分かりやすいのではと感じました。

田中 そうですね。英語の文章では、最初にはっきりと「自分はこう思う」という主張を述べ、続けて「なぜならば」とその根拠を展開していきます。その根拠となるアイデアには、決められた解答や公式があるわけではありません。

 生徒同士、あるいは生徒たちと教員とのディスカッションやディベートも盛り上がりますし、生徒のアイデアの中には私たち教師がうなってしまうような素晴らしい発想や着眼点もあります。そういった点がアクティブ・ラーニングに向いていると思います。

――英語ではいろいろお書きになっていらしたかと。 

田中 以前、『えいごであそぼ』というNHKの番組で英語の歌の作詞をしました。また、さまざまな英語教材や高校入試用の英語参考書なども執筆しました。その経験が、英語教師としての糧になっているといまでも感じます。