宿泊行事での生徒同士の語り合い
――その他にも、宿泊を伴う行事はありますか。
鵜崎 5月の東北旅行(中3)、6月のオリエンテーションキャンプ(中1)、7月半ばから8月にかけてのクラブ合宿、10月のひろしまの旅(高1)といった宿泊行事があります。どの企画にしても、伝統的にほとんどが生徒の運営によります。
20年度と21年度の2年間はコロナで宿泊行事が全然できませんでした。この間に入ってきた新任の先生方は、こうした行事を経験していません。それを早急になんとかしないといけないと考えています。
――それは先生方にとっても結構大きいことです。
鵜崎 この2年間は高1生が広島に行けませんでした。そこで、3月下旬の2日間、校内で広島とZoomでつなげて、原爆の体験を持つ証言者の方とオンラインで対話しました。
――今年はウクライナでの戦争もありますから、よけい切実なものでしたね。
鵜崎 そうなんです。「平和教育なのに、なぜ戦争のことを学ぶのですか」と質問してくる生徒もいたりして、いろいろな議論が出てきますね。戦争が始まると、国のために戦うことのできる強い女性を育てることが必要だということも社会の要請として出てくる。社会のためにということを表面的に捉えると、非常に危険な場合があります。本当にそれが社会にとって必要なことなのか。それは普遍的なものなのか。その点を見極めていかないといけないと思います
本来は、広島の現地に赴いて、その他のいろいろな平和教育も交えて、戦争体験を聞いて学んでくるというのが趣旨です。それがいまできません。また、広島女学院の生徒がつくってくれた動画を見るような交流もしています。
――広島女学院もあちらでは難関の女子校ですね。
鵜崎 全国からいろいろな学校が訪れるので、広島女学院も受け入れが大変みたいです。今回は動画を送っていただき感謝しています。
服装などは生徒の自主性に任せていますが、広島に赴いて被爆者の方に話を聞くときにどのような身なりがよいのか、その年代の方々からの見られ方、その場に合っているかは考えてほしいと言っています。これをしてはいけないという具体的な指導は特にしていません。考えることを大切にしています。
――女子学院は半世紀前から制服がありませんものね。
鵜崎 ズボンをはいていたいから受けましたという生徒もいました。生徒は本当にさまざまな服装をしています。
――ジャンパースカートの桜蔭も制服にズボンを導入するというので驚きました。LGBTのような点では、世間が関心を持つ以前から女子学院では自由な印象ですが。
鵜崎 生徒はジェンダーのようなテーマは大好きです。修養会などでもこのような話題は出てきます。そういった性的な指向については、自ら語る生徒などいろいろです。女子校という社会の中では、性差に関しては取り上げる機会も多くありませんし、生徒たちもあまり感じません。性差よりも個として見ているので、お互いに個性を重視する傾向があります。