広範囲から生徒が集まる交通至便な立地
――進路に変化はありましたか。女性の自立を考えると医学部は結構魅力ですよね。
宮阪 医学部を目指す生徒の数は年により異なります。研究職を目指したり、ある年には建築が人気だったり。何が影響しているか分かりませんが、見ていると面白いですね。
――進学支援のためのアフタースクールなようなものもありますか。
宮阪 高2・3の生徒が自由に取ることができる進学講習を行っています。東大や一橋大のように大学名を付けた講習の他にも、先生方の思い入れが強いので、いろいろ面白い名前が付いている講習を開講しています。
海外進学を目指す生徒のためには、SAT(大学進学適性試験)の講座もあります。数学の授業で苦戦している生徒たちも、SATでは高得点を取ります。
――ところで、事務室がカフェの奥にありますね。とてもオープンで、普通の学校の事務室とは異なる斬新な印象を受けました。
宮阪 あのカフェは、在校生だけではなく、卒業生や保護者など洗足に関わる方が気軽に自由に立ち寄ってもらえるように、いらしたらお茶でも飲んでいってくださいという思いを込めてつくりました。
――壁に書いてある英文の言葉(LET's)は、校是みたいなものですか。
宮阪 これは教職員からの、中高の6年間を過ごしてもらう生徒への思いです。
まず、すべての経験が学び(LEARN FROM EVERYTHING)となります。次に、1人では何もできない。あなたの周りには、10人いたら10人価値観が異なるし、みんな大事な人生を歩んでいるので、周りの人を大事にしようね(EMBRACE YOUR COMMUNITY)という思いです。
三つ目が、あなたが自分自身で考えて、考えて、考え抜きなさい(THINK FOR YOURSELF)という気持ちです。ハーバードビジネススクールに通った卒業生が、そこで「あなた自身の考えは」と何度も聞かれたと話してくれたことがあります。生徒には考えさせたいという強い思いが私にはあります。
――最後の「Soar」とは。
宮阪 以前、生徒の付き添いでニュージーランドに行った時、日本ではアホウドリと呼ぶのでしょうか、アルバトロスが断崖絶壁から3メートルある大きな翼を広げて飛び立っていくのを目にして、とても感動したのを思い出しました。バタバタとではなく、雄大に空を飛ぶ姿を表す言葉をネイティブ教員に聞いて、生徒たちに飛び立っていってほしいという思いを込めて最後に加えました。
――JR南武線と東急線の交差する溝の口という立地も、人気を支えている要因の一つでは。
宮阪 東急は田園都市線の他に大井町線があります。それぞれ、東京メトロの副都心線や南北線、都営三田線などいろいろな路線が乗り入れてきていますので、東京湾岸の佃(中央区)から通った生徒もいます。
――他校のように90分など通学時間制限はないのでしょうか。
宮阪 特に設けていません。平均の通学時間は57分です。中には新幹線で静岡から新横浜経由で通ってきた生徒もいました。6年間遅刻もせずに通ってくれました。東京からの生徒は35%を占め、世田谷区が一番多い。最近増えてきたのが、港区や中央区です。
――世田谷区にある東京都市大学付属は40%が神奈川県からだそうですから、ちょうど反対になりますね。