図書室には、各界で活躍する卒業生の様子を伝える記事の他、さまざまな発表展示も  写真提供:横浜雙葉中学高等学校

多彩な進路を歩む卒業生

――教科学習に関して、カリキュラムの進め方はいかがですか。

木下 英語については中1から少人数で理解を定着させ、中3からは英語と数学で習熟度別授業を行っています。高2からは、自分の行きたい進路に向けて科目を選択しています。

――作家の三浦しをんさんやデジタル相の牧島かれんさんもOGなんですね。

木下 さまざまな分野の仕事に就く人がいるのが本校の特徴です。海外のNGOで活動している人、国内や海外の大学で教えている人、医学や法曹界、マスコミで活躍する人、ピアニストや画家もいます。宝塚歌劇団で活躍している人もいます。

――私の中では高度専門職的な卒業生が多いイメージがあります。皆さん多彩な進路を切り開かれている。理系が多い印象ですが。

木下 最近は特に医学部など医療系が増えています。すでに医師として地域の病院やクリニックで多くの卒業生が働いており、健康診断に行った時も病院の廊下で医師となった卒業生に声を掛けられました。地方医療に取り組みたい、産婦人科医となり女性の地域医療の改善に貢献したい、ハードであることは承知の上で救命医療に携わりたいなど、さまざまな志を持って医学界で活躍しています。

 もちろん、各自の関心に基づいてさまざまな分野の職業に就いていますが、大切なのはどんな職業に就くかではなく、どのような姿勢、どのような方向を向いてその職業に就くかだと、生徒に話しています。

――大学合格実績にも反映していそうですね。

木下 2021年は東大に10人合格しました。2ケタ合格は久しぶりのことでした。ただ合格者数を増やそうと意図したのではなく、最後まで目標を目指して挑戦しようと、教員と生徒とが一緒に歩んでいった結果だと思います。

 22年の東大合格者は4人でしたが、ほかにも、医学部には現役でのべ42人が合格し、進学者数は国公立大の4人も含め16人、つまり、学年の1割が医学部に進学しました。卒業生177人の約半分は、医学部や早慶上智に進学しています。毎年それぞれの学年によって傾向はさまざまですが、生徒たちなりに自分の道を切り開いています。

 進路を決める際に、「自分のコンパスを持つように」と生徒たちには伝えていますが、一人一人が周りに流されず、ぶれることなく100%自分らしい人生を歩んでほしい、それが本校の最大の願いです。多くの卒業生が、「横浜雙葉で学び、核となるものを育ててもらった」と言ってくださる理由は、こんな点にあるのかもしれません。

――この景色の良い、山手という最高の環境の魅力を受験生にどのように伝えるか、それが課題ですね。

木下 最近は、横浜の受験生も東京に目が向いているのか、あるいは、共学校や大学付属校も増えていますから。ただ、本校の良さ、例えば、横浜の緑豊かで海が見える立地、創立以来の自分も他者も一人一人を大切にする雰囲気、教師や友人と語り合いながらの学校生活を、皆さんにもっと知っていただけたらと思います。

――中学時代にのびやかな空間・時間の中で学力を付けながら、自分自身、また、自分の将来を探るのも良いのではないでしょうか。横浜雙葉はそんな場・居場所を皆さんに提供されていると感じました。

テニスコート沿いに、早咲きから遅咲きまでさまざまな種類の桜が植えられ、長い期間、花をめでることができる。「それは一人一人違った個性を開花させる意味につながります」(木下校長)
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