多言語環境と世界へのまなざし
――最初の入試を実施する時にこちらの学校で講演させていただきました。非常にユニークな、面白い入試問題を出されます。
坂井 特色を出すため、帰国生教育のノウハウを生かして、適性検査でも工夫しています。新型コロナの年には、コロナに関する問題を出しました。
――こちらの特徴は、なんといっても日本の国公立校で初めてのIB校ということですね。
坂井 IBのスタイルで探究的な学びをずっと行っていることと、次回ご紹介しますが、6年間で形をつくるため「ISSチャレンジ」を位置付けている点でしょうか。5年に一度、IBの本部からプログラム評価があり、いろいろな助言に応えてきました。
――教室など施設面でもIB校の基準がありますよね。視察も多いのでは。
坂井 特にDPクラスの施設などには特徴がありますね。文部科学省が掲げている、日本国内にIB校を200校つくるにはどうしたらいいのかということで、コロナの前には年間600件くらいの訪問や問い合わせがありました。
コロナでだいぶ減りましたが、誰も訪れて来ない日の方が珍しかったほどでしたから、授業を見られることには生徒も先生も慣れっこですね(笑)。
――IBには、いま実施されている新しい学習指導要領の内容を先取りしているところがありますよね。
坂井 探究でもルーブリック評価でも、学習指導要領がIBに近づいてきたという感じがしますね。
――至る所に、イラストで示された学習者の姿が掲示されていますね。
坂井 このイラストは美術の先生がデザインされたものですが、在校生の意識にしみ込むよう、すべての教室や廊下などに掲示してあります。卒業するまでには、この10の項目が全員分かるようになっているはずです。
――これを見ると、インクワイアラーズ(探究する人)とか、リフレクティブ(振り返りができる人)とか、いまの教育学で重視されているものがすべて入っています。
坂井 そうですね。バランスのとれた人とか、振り返りができる人とかを目指すことで、世界に通用する教育を行っていると思います。生涯学び続けないといけないこれからの人間としての生き方を教えている、という感じでしょうか。
――総合メディアセンター(図書室)はいろいろ活用できそうなスペースですね。
坂井 帰国生は約60の国や地域から来ています。ここにはマレー語の本がありますが、IBの本部からもできるだけたくさんの言語の資料を置くよう言われています。学年集会や授業もこのスペースで行っています。多様性を認め合うこうした空間は大切ですね。思春期の生徒は図書館から離れがちですが、ここは頻繁に展示替えをして、生徒の探究学習の拠点になってくれています。