創造的な学びの探究(3年社会科)。社会的課題を起業によって解決するプランの提案(左)。総合学習ではKJ法を活用して思考を深めることも(右) 写真提供:筑波大学附属中学校

先進的な授業の実践

升野伸子(ますの・のぶこ)
筑波大学附属中学校副校長

 

日本公民教育学会副会長。専門は公民科教育・ジェンダー論。東京大学経済学部卒。お茶の水女子大学大学院修了。大妻中学高等学校教諭(社会科)を経て、2011年に筑波大学附属中学校教諭、19年より現職。共著に『女性の視点でつくる社会科授業』(学文社)、『入門 社会・地理・公民科教育――確かな実践力を身に付ける』(梓出版)、『生徒が夢中になるアクティブ・ラーニング&導入ネタ80』(明治図書出版)など。最新刊は、監修『中学校ってどんなとこ? 楽しい中学生活のヒント大全』(世界文化社)。

 

――昔から英語の授業は英語で行っていますね。

升野 英語の授業は週4時間ですから、標準的なカリキュラムです。しかし、前身である高等師範学校の尋常中学科の時から、英語を英語で教える、耳から入る指導をしています。また良い教材を先生が作成して、学力が定着するような授業を行っています。そのため、生徒は授業中に話す場面がとても多いです。

 この前見た授業では、2人組の生徒が10枚の写真の中から2枚を選び、その写真を用いてTo+不定詞の表現を使いながら、インタラクティブなやりとりを進めていました。資料がプロジェクターを使って黒板に投影される場合もありますし、子どもたちの端末に映し出されたものを指してお互いにやりとりをする場合もあります。台本にある内容をそのまま話すのではなく、場面を選択して、その場にふさわしい会話を進めていく実践的な授業でした。

――先進的な授業づくりですね。

升野 教科書に出ていたペンギンの単元に基づいて、プレゼン資料をつくろうという授業もありました。自分の端末に作成したパワーポイント資料を基にして、英語でプレゼンを行っていました。自宅で、ロイロノートを使って、スピーチ原稿を録音して提出させるという宿題もありました。週4時間であっても、十分に英語4技能が定着するような授業ができていると思いました。

――指導的な先生方がいらっしゃるからですね。

升野 本当にそう思います。本校の先生方は、全国の中学校に対して授業提案ができる、実力のある先生に来ていただいています。

――実験的な教育、意欲的な授業をやっていることへの理解が保護者にも求められるわけですね。

升野 学習指導要領から離れたことも実験的にやることがあります。学習指導要領にない単元だけれどもやってみようとか、本来は3年生でやる単元を1年生でやった方がいいのではと試行してみたりすることもあります。美術と国語でコラボ授業をやってみようとか、教科を超えて先生方はアイデアを出し合っています。

 先生方は、授業の研究に精力的に取り組んでいます。附属中学校は実験校ですから、先導的な取り組みをさせてもらえる場でもあります。このようなことも含めて、責務を持つ学校であるという本校の特色を理解していただきたいと思っています。 

――授業以外でも特色がありそうですね。

升野 教科外教育についても、先進的な取り組みを行っています。また、本校では自治活動と呼んでいますが、生徒会活動がとても活発で、学芸発表会・運動会・卒業生歓送行事・新入生歓迎行事などは、生徒の委員会が中心となって行います。また、「附属の国会」と呼ばれる自治委員会は学級委員からなり、このような行事の要綱を審議することもあります。1年夏の富浦生活、2年夏の黒姫生活、3年5月の修学旅行などの宿泊行事も、生徒委員中心に企画・運営を行っています。

100年以上続く1年生の富浦生活。これを終えることで真の附属生になる 写真提供:筑波大学附属中学校