第IIコンピュータ教室とメディア教室を4年前に改装した「マルチラーニングルーム」。普段は、「情報」の他、英語や数学の分割授業などにも活用されている。パーテーションを外せば、三つの教室が連結され、1学年が集まることも可能に

“英語の東洋英和”は理系も充実

[聞き手] 森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所代表。1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

――ところで、早稲田大と慶應義塾大の合格実績がとても伸びているのはなぜでしょう。

石澤 特別なことはしていません。手前みそかもしれないですが、英語の実力はかなりあると思います。英語という武器を一つ持っている強み、というのはあるかもしれません。

 中1・中2はクラスを分割して少人数で授業を行い、中3からは習熟度別になります。生徒が臆せず話すことができる、その空気感が大きいと思っています。

――“英語の東洋英和”ですからね。昔は外交官の奥さんが多かった印象もあります。

石澤 早慶に行った卒業生が、第一外国語の英語の授業を受けて、「高3で習っていた方が難しかった」と言っていました。

――帰国生を入れているわけではないのですか。

石澤 帰国生入試を設けていますが、実際に入ってくるのは毎年数人です。英語の授業ではあまり生徒は座っておらず、立って歩き回ったり演技したり歌ったりしていまして。

――すでに帰国生文化を感じますね(笑)。英語で英語を教えるというのは以前からやっていますか。

石澤 はい。やはり英語の教師の授業が上手です。受験英語ではなく、使える英語を目標にしています。「いま使っている文法を使って、先生に何か聞いてきなさい」とか、シチュエーションづくりがうまい。まずは英語でのコミュニケーションです。中3になると英語がよくできるようになります。

――そうすると、先生方も英語で答えるのですか。

石澤 けっこう大変です。しょっちゅうそういうことをやっています。僕は理科が専門ですが、すごく応答に苦労します(笑)。

――理系への進学状況はいかがですか。

石澤 理系も多いですね。特に、医歯薬系が。小学部でお医者さんのご家庭も多いですが、人の役に立ちたいという気持ちが小さい頃から培われていて、ダイレクトに医学部という志向があります。2022年の卒業生186人のうち、14人が医学部医学科に進んでいます。

――先生がご専門の理科の学習ではいかがでしょう。

石澤 中学校に入ると、理科は概念形成という点で難しくなります。女の子はこれがちょっと苦手なものですから、実験をするとか現物を見せることを本当にいっぱいやっています。生物の先生は実物にこだわりをもっていて、生物部がギリシャリクガメを飼育しているのですが、休み期間中に自宅に連れて帰ると、なつくんですね。かわいくなって、なかなか学校に返してくれなかったりします(笑)。いまは、データサイエンスにも力を入れています。

――理科の実験機器などをそろえるのもおカネがかかりますが、「情報」ではいかがですか。

石澤 まずは環境づくりです。コロナ禍で方針転換しました。うちのWi-Fiは高速ですよ。ただ、導入しただけではダメで、毎年のメンテナンスにかなりおカネがかかります。それは必要なおカネなので惜しみなく使いますし、多くの卒業生から支援もいただいています。

――そこが伝統校の強みですね。授業は変わりましたか。

石澤 ものすごく変わりました。まず高校生から導入したChromebookを全員が持つようになったのは20年度のことです。この頃から授業やホームルームでも取り入れていきました。その良さとしては、共有できるということ、リアルタイムでやりとりでき、応答があることです。

 その後コロナ禍で、これをオンラインでも活用することになりました。生徒のパソコンに直接教材が送られ、生徒は自分の意見を入力しています。これがないと、いまは授業が成り立たないですね。

――他にも活用されていますか。

石澤 学校からの連絡に紙を使うことはほぼありません。保護者にもアカウントを割り振っています。おかげで学校からの連絡の紙が途中で消えてしまうようなことがなくなりました。

「デール」と呼ばれているげっ歯目のデグー(左)と、10年ほど育てているギリシャリクガメの「カメ子」(右)。校内では生物部が飼育しており、学校見学の受験生にも人気がある。以前、ハリネズミの「ハリー」が死んだときには、牧師も交えて盛大にお葬式を行った。長期休暇などで無人の期間も長いので、イヌなどは飼うことができない 写真提供(右):東洋英和女学院