この7月11日に日本上陸を果たした、米アップル製の多機能携帯端末「iPhone 3G」。年内には、全世界70カ国で発売される。初代iPhoneと合わせた累計販売台数の目標は、「年内に1000万台」だったが、前倒しで10月に達成してしまった。

 世界での引き合いの強さとは裏腹に、日本市場での“受け”はイマイチ。「法人需要の定着はこれから」(アップル)ということだが、発売当初の“お祭り騒ぎ”とはうって変わって、売れ行きは減速気味だ。

 それとは対照的に、iPhoneやアップル製音楽携帯プレイヤー「iPod touch」向けのアプリケーションを開発・販売することで大儲けしている日本人が続出しているという。

 これらアップル製端末には、アプリケーションのダウンロード販売サービス「App Store」のアイコンがついている。クリックしてパスワードを入れるだけで、多種多様なアプリケーションを簡単に購入できる。例えば、日本で販売されているアプリは、ゲーム、音楽、仕事の効率化、健康など全19分野に及び、その総数は6280本にのぼる。

 物書堂(ものかきどう)の廣瀬則仁社長は、三省堂の「ウィズダム英和・和英辞典」を収録した電子辞典アプリを2800円で販売した。本家の“紙”の辞書は英和と和英を合わせると7000円近くになることを考慮すれば安いが、App Storeに並ぶアプリの最低価格は115円で、2800円という高値は目立つ。それでも、10月時点で1万4000本を販売、約3900万円を売り上げた。アップル側がコンテンツ売上げの3割を徴収するので、物書堂や三省堂などの取り分は、残り7割に相当する約2700万円になる。

 廣瀬社長がアップル製端末向けにアプリを提供しようと考えたのは6月9日のことだった。コンテンツ権利者である三省堂に承認をもらい、開発、試作品設計を経て、アップルに企画書を提出したのが7月3日。そこまでに要した期間はわずか24日である。しかも、そもそも、辞書のオンライン化技術の素地はもっていたので、必要経費は、アップル社へのベンダー登録費用1万2000円を含めた数万円で、人件費は廣瀬社長を含めた2人分だけ。時間も、おカネも、人手もたいしてかからないため、ベンチャー企業や個人であっても、気軽に参入しやすい、というわけだ。  

  しかも、アップルへ送る申請書を記入するときに、国名が並ぶ欄にチェックするだけで、何カ国で販売するのかをエンジニア自身が選択できて、自作のアプリケーションを世界中にばら撒くことができる。