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トランプ大統領の一般教書演説は「米国第一」政策の成果を強調したものだったが、国連決議違反の「中東和平案」や他国の主権を無視した数々の国際法違反は米国への敬意を低下させ米国の孤立につながる。

米国によるイランのソレイマニ司令官殺害は明確な国際法違反行為だが米国・イランとも全面衝突は回避した。米国は中東介入で3回、失敗し、武力に劣るイランも本音は同じだ。

シリア内戦は米国抜きで戦後の枠組み作りが進められることになり、米国はアフガニスタン、イラクに続いて中東介入に失敗した。圧倒的な軍事力、情報収集力を持ちながら情報分析を誤ったのが敗因だ。

サウジアラビアの製油所爆破はイエメン内戦で「反サウジ軍」が攻勢をかけたものだ。UAEの寝返りで、サウジは一気に窮地に立ち、原油を依存する日本も他人事でなくなった。

ボルトン大統領補佐官の解任で北朝鮮、イランへの先制攻撃やベネズエラ介入の危険が軽減した。大統領選を前に成果を演出したいトランプ大統領にはここまでの“好戦派”は邪魔だった。

日韓GSOMIAは米国主導で締結されたもので、韓国が日本を「仮想敵」としてきたことを考えれば破棄は驚くにあたらない。北のミサイル発射などの情報は米国を経由する形で共有される見通しだ。

トランプ政権の米軍駐留経費負担大幅増額の要求は、特別協定改定や貿易交渉を有利にするための“トランプ流駆け引き”だ。日本防衛にあたっている在日米軍部隊は無きに等しく、増額要求に応じる必要はない。

米国とイランの対立激化の中で、ホルムズ海峡の安全確保のための「有志連合」結成が急浮上したが、日本にとって参加は「百害あって一利なし」だ。米国がイラン核合意に復帰するのが本来の問題解決策だ。

米中対立は異なる体制の覇権争いの様相だが、「経済力」を見てもいわれるような米国の「圧倒的優位」は疑わしい。国際的に孤立する米国に対して巨大な市場と工業力を持つ中国の強みが目立つ。

北朝鮮の短距離弾道ミサイル発射は、膠着する非核化交渉で米国の気を引く狙いだが、国連決議違反だ。制裁解除が遅れてさらに交渉が硬直化、北朝鮮が中距離ミサイル発射にエスカレートする懸念もある。

トランプ大統領がゴラン高原に対するイスラエルの主権を認めたが、貿易戦争やイラン核合意離脱などに続き、“トランプファースト”の対外政策で世界が「冷たい平和」の時代に入りそうな様相だ。

華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟CFOの逮捕は謎が多く、米国の国内法を適用するなどの強引さが目立つ。背景には「サイバー覇権」を中国に奪われかねないという米国の強い危機感があるようだ。

米中「新冷戦」がいわれるが、軍事対立を続けた米ソ冷戦とは本質的に違う。米中は経済的に互いに結びついている。貿易戦争を仕掛けた米国は物価値上がりや部品不足から政府への批判がいずれ高まる。戦争は長くは続かない。

米軍横田基地に正式配備されたオスプレイは、敵地に潜入し要人殺害などをする特殊部隊で使われる可能性が高い。米朝対立が再燃すれば「斬首作戦」で出動し、横田基地が北朝鮮のミサイル攻撃の標的になる恐れがある。

日本が装備品などを米国企業から購入する米国の有償軍事援助が安倍政権の7年間で5倍に増えた。その来年度予算要求の目玉は、イージス・アショアだが、導入についての説明はごまかしが多い。

米国から購入を決めた「イージス・アショア」の配備費用は当初から3倍近くに膨れ上がったが、防衛力強化につながるのか、費用対効果は疑問だ。イージス艦のミサイル装備を充実する方がはるかに現実的だ。

北朝鮮の核に対するCVID(完全で検証可能、不可逆的な非核化)は実現不可能な目標だ。トランプ大統領の思惑ももっと現実的なところにある。核や軍事の現実から遊離した議論は日本の国益を損ねる。

米朝首脳会談は焦点の「非核化」で時期や‘「検証可能」や「不可逆的」なものにする具体策を曖昧にしたまま、日米が「無意味だ」としていた「対話のための対話」に終わった。だがそれには理由がある。

北朝鮮の「非核化」を話し合う米朝首脳会談が開かれるが、「完全で検証可能、不可逆的な非核化」の実現は難しい目標だ。「強硬論」に乗って性急に求めれば逆に対立を再燃させかねず危険だ。

中国に対抗するとして尖閣諸島などの防衛にあたる「水陸機動団」創設や「小型空母」保有が検討されているが、実戦となればそれほど役に立ちそうにない。それでも自衛隊が保有したがるのには理由がある。
