
上久保誠人
第311回
8月10日に前倒しで実施された内閣改造では、旧統一教会と関係を持っていた閣僚たちを交代させたはずだった。だが結局、新任・留任となった閣僚らも同教団と関係していたことが続々と発覚し、メディアをにぎわせている。それによって支持率が急落している状況下で、第2次岸田改造内閣を立て直すキーマンといえる人物が、河野太郎氏・高市早苗氏・萩生田光一氏である。彼・彼女らの党内での評判や、「未来の宰相」としての資質について解説する。

第310回
米国のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪れ、世界中で議論を呼んでいる。経済危機を避けるため、米中が対話の可能性を模索しつつあった中、その努力を無に帰したからだ。中国はペロシ議長の訪台を受けて大規模な軍事演習を実施し、台湾だけでなく米国を挑発している。このことは、もし今後の世界で「新冷戦」があるならば、その主戦場が「北東アジア」であることを明示したといえる。冷戦といえば、ウクライナ戦争の渦中にあるロシアを想起し、意外に思う読者がいるかもしれないが、ロシアの脅威はもはや幻想にすぎない。そういえる要因を詳しく解説する。

第309回
安倍元首相の銃撃事件を機に、世間では「政治と宗教」に対する関心が高まっている。歴史をひもとくと、確かに自民党をはじめとする政党は宗教団体と密接に関係し、選挙時の「集票マシーン」として利用してきた。その一方で、宗教団体が望む政策が実現したことはほぼなく、「政教分離」の原則は守られてきたといえる。それでも筆者は、政党が宗教団体を集票組織として安易に使うことは控えるべきだと考える。「政治と宗教」の関係を具体的に述べながら、その理由を詳しく解説する。

第308回
安倍晋三元首相が銃撃されて亡くなった。本稿では安倍氏に哀悼の意を表しつつ、首相としての歩みをじっくりと振り返る。第1次政権は「大失敗」と批判されたが、不器用さの中に改革への志を秘めていた。第2次政権では熟練度を増した一方、窮屈で息苦しそうにも見えた。そんな安倍氏の功績の一つは、本来ならば左派野党が取り組むべき「労働者への分配」などの政策を推進し、左派野党の居場所を奪って壊滅させたことである。この「左傾化」戦略は、日本にどんな影響をもたらしたのか。

第307回
選挙期間中の7月8日、安倍晋三元首相が応援演説中に銃撃されて亡くなった。これは許すことのできない蛮行である。そして、その直後に開催された第26回参議院選挙は、単独で63議席を獲得した自民党の大勝という結果に終わった。今回の結果について、「安倍元首相の弔い合戦」となり、自民党への同情票が集まったことが勝因だと分析する向きもあるだろう。だが、参院選の勝敗を分けたポイントはそれだけではなく、他に2つの要因がある。その詳細と、今後の政局の展望について詳しく解説する。

第306回
ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから4カ月が経過したが、いまだに膠着(こうちゃく)状態が続いている。欧米諸国はこの状況を受け、武器供与などの支援を強化している。しかし、一方で欧米諸国は「ロシアが東部ウクライナを占拠したまま」での早期停戦を望んだり、「領土割譲の妥協案」を提案したりと、「力による一方的な現状変更」を暗に認めているような姿勢も見せている。だが日本はこれらの譲歩案を認め、中途半端な姿勢を示してはならない。その理由とは――。

第305回
岸田文雄首相が掲げる経済政策「新しい資本主義」の実行計画の骨子が明らかになった。だが筆者は、その内容に違和感を覚えた。決して目新しいものではなく、以前から認識されていながら有効な手を打てなかった「古い政策課題」ばかりが並んでいたからだ。新政策はなぜ新規性がなく、どのような視点が欠けているのか。

第304回
マクロン仏大統領とショルツ独首相が、ロシアのプーチン大統領と、80分間にわたって電話で3者会談した。このように、欧州諸国の首脳はウクライナ紛争の停戦に尽力している。一方、米国と英国の動きを注視すると、対話による紛争解決に消極的に見える。それどころか、開戦前から紛争の兆候を把握していたにもかかわらず、積極的に止めようとしなかった印象だ。米英は、なぜこうしたスタンスを取っているのか。その要因を、経済と政治の両面からひもといていく。

第303回
G7の首脳が「ロシアへのエネルギー依存から段階的に脱却する」という共同宣言を出した。日本も同調する方針だが、岸田文雄首相は、日本の政府や企業が出資するロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン1」「サハリン2」の権益を維持していく方針を示している。共同宣言に同調しながらも、サハリン権益を手放したくない「板挟み状態」の日本は、どんな対応を取るべきなのか。

第302回
中国は、最初に新型コロナウイルスが感染拡大した国だ。しかし、徹底した都市封鎖と行動制限の「ゼロコロナ政策」によって感染拡大を抑え込んだ(本連載第236回)。しかし、今、その政策が限界を迎えつつある。国民からの不満も爆発しているのに「ゼロコロナ」から脱却できない。権威主義的体制の根本的な問題は何か。

第301回
ウクライナの想像を超える奮戦で、ウクライナ紛争が長期化・泥沼化している。そのウクライナの背後には、「味方した方が戦争に勝つ」という「不敗神話」を持つ英国の存在がある。日本の安全保障問題も議論に上がる中で、今一度、英国との協力関係を見直したい。

第300回
ロシア側は今や「プーチンの顔をいかに立てるか」が停戦実現の最大の課題となっていて、機能不全に陥っている。それが、「権威主義体制の国」の有事の際のもろさだ。もう一つの「権威主義体制の大国」である中国の動向はどうなっているのか。

第299回
ウクライナ紛争でロシアが最低限譲れないのは、ウクライナはNATOに加盟しない「中立化」である。すでに、ゼレンスキー大統領は、「NATOには加盟できない」と発言しており、ウクライナ側はそれを受け入れる用意があるようだが停戦協議が進まない。ロシアがウクライナの「中立化」以上を要求し続けているからだ。ロシアが、「無条件降伏」「非武装」の要求を取り下げればいいのだが、それができない。その理由は、突き詰めるとプーチン大統領の存在そのものに行きつくことになるからだ。

【第298回】
ロシアは、今「進むも地獄、引くも地獄」という状況に陥っているのではないか。国際社会からの非難や制裁も厳しく、周辺国でも一挙に「ロシア離れ」が進むなど、プーチン大統領の誤算続きだ。もしプーチン大統領が撤退すれば、どうなるだろうか。今のうちに考えた方がいいかもしれない。

第297回
ロシアが、ウクライナへの軍事侵攻に踏み切った。東西冷戦終結後、米国や欧州が築いてきた国際秩序は崩壊し、欧米や日本など自由民主主義陣営とロシアの対立は決定的になり「新冷戦」が始まった――と多くの識者が、このような見方をしている。だが、それは正しいのだろうか。

第296回
北京冬季五輪が閉幕した。日本は、金3個、銀6個、銅9個の合計18個の冬季五輪史上最多のメダルを獲得した。一方、誤審、違反、失格、疑惑とさまざまな「騒動」が連日起こる混乱五輪となった。しかし、これまで以上に、北京冬季五輪の「騒動」が拡大したのは、開催国・中国に対する「信用」が欠けていたからだと言わざるを得ない。

第295回
北京五輪が開幕したが、新疆ウイグル、南モンゴル、香港などの人権侵害に対する抗議として、米国、英国などが政府首脳を五輪に派遣しない「外交ボイコット」を行った。それでも中国の状況は変わらないが、筆者の周りでは、日本の自由民主主義を学びたいという中国人学生が増えている。彼らは日本で何を得るのか。

第294回
オミクロン株の感染が世界中で急拡大する一方で、英国などでは、経済活動を優先する方針を示している。日本でも、尾身茂・政府分科会会長が「これまでの『人流制限』ではなく『人数制限』がキーワードになる」と指摘していて、「ポスト・コロナ」の社会のあり方が本格的に模索されることになる。そして、次第に浮上してくるのは、「元に戻りたい人たち」と「新しい社会を創りたい人たち」の争いだ。

第293回
昨年は、コロナ禍によって「デジタル化の遅れ」をはじめ、日本社会のこれまであまり明らかになってなかった問題が噴出した年だった。この日本の停滞の元凶は、子どもの「受験」から始まる古いキャリア形成にあると考える。今回は、日本社会の「受験」「就職活動」から「年功序列」「終身雇用」の「日本型雇用システム」という、日本独特のキャリア形成のシステムに焦点を当てる。

第292回
12月22日、安定的な皇位継承のあり方を議論する政府の有識者会議が、皇族数の減少への対応策の最終報告書をまとめた。その中では「女性皇族が結婚後も皇室に残る案」と「旧皇族の男系男子を養子に迎える案」の二つが示されているが、現実的にはハードルがいくつもある。そこで私は英国王室の徹底した維持の備えも参考にすべきだと考える。
