
上久保誠人
第331回
紛争のさなかにあるウクライナのゼレンスキー大統領が電撃来日したことで、G7広島サミットは「大成功した」という見方が強まっている。これを絶好の機会と捉え、岸田首相が衆議院を解散するかもしれないという説まで浮上している(首相本人は否定)。だが昨今の国際情勢に鑑みると、今回のサミットで根本的な問題が解消されたとはいえない。日本にとっての「真の課題」も残されたままだ。そういえる要因を詳しく解説する。

第330回
5月頭に行われた、英国王・チャールズ3世の戴冠式。この式典には古くから「他国の国王などは参列せず、代理人を派遣する」という慣例があった。だが今回は、その伝統が破られ、他国の国家元首や王族が招待された。数多くの君主が参列する中、日本の天皇陛下は欠席し、秋篠宮ご夫妻を派遣した。この天皇陛下の選択について批判の声もあるが、筆者は“正解”だと考えている。英国が長年の伝統を覆した理由と併せて、そういえる要因を解説する。

第329回
地方選で維新が躍進し、全国政党化に一歩近づいた。ただし、自民党に不満を持つ層をうまく獲得したのは確かだが、首都圏での支持拡大には課題が残るのが実際のところだ。一歩間違えれば、今回の地方選で振るわなかった左派野党と同じ轍(てつ)を踏みかねない。では、自民党に対抗する一大政党として、維新が全国的な支持を得るにはどうすればいいのか。他の野党が失速した要因と併せて考察する。

第328回
昨今は「世襲政治家」への批判が再燃している。自身のホームページに「家系図」を掲載した岸信千代氏、「公用車で観光」疑惑が浮上した岸田翔太郎氏などの言動が目立つからだ。かつては世襲体質を変えようと、各政党が「候補者の公募」に力を入れていた時期もあったが、結果的に「小泉チルドレン」「小沢ガールズ」などと呼ばれた新人は失言や問題行動を繰り返した。なぜ、ビジネス界で活躍する優秀な人材は、あまり政界に入ってこないのだろうか。その根本的要因を考察する。

第327回
岸田首相がウクライナを電撃訪問した。だが、ゼレンスキー大統領に「必勝しゃもじ」を贈ったという報道を見て、筆者は違和感を覚えた。戦争がこれ以上長引いても、得をするのは米英などの西側諸国だけで、戦地では尊い人命が失われていくからだ。岸田首相はウクライナ紛争の開戦直前にプーチン大統領と電話会談し、情勢についての「懸念」を表明したことがある。当時と状況は変わっているが、紛争解決に向けては、岸田首相がもう一度ロシア側と対話し、停戦の可能性を探ることも有効ではないか。

第326回
放送法における「政治的公平」の解釈変更を巡る問題で、渦中にある高市早苗氏が「流出した文書は捏造だ」という趣旨の発言をし、議論を呼んでいる。文書の真贋や高市氏の去就に世間の注目が集まっているが、それらは本質的な問題ではない。真に問題視すべきは、15年の解釈変更を機に、当時の安倍政権に批判的なキャスターが降板するなどメディアの体制が変わったことだ。この機会に、自由民主主義社会における「言論の自由」の在り方を今一度考えてみたい。

第325回
米国・英国・ドイツが“NATOの3大戦車”と称される兵器をウクライナに供与することが決まった。だが、一部報道によると、ウクライナの正規軍は壊滅状態にあり、他国からの義勇兵によって人員不足を賄っているという。敗色濃厚な状況下で強力な武器を提供しても、戦争をいたずらに長引かせるだけではないか。特に米英をはじめとするNATO諸国は、戦争を延々と継続させる目的で、武器供与を「小出し」にして中途半端な支援を続けているように思える。そういえる理由を詳しく説明する。

第324回
内閣支持率が急落しても、岸田文雄首相に動じる様子はない。その泰然自若とした姿は、支持率低下が必ずしも政権交代に直結しなかった「中選挙区制時代」の宰相に通じている。防衛増税のように「不人気だが必要」といえる政策を打ち出せる胆力は、古いタイプの政治家ならではの強みだ。一方で、その「古さ」は、息子を首相秘書官に登用して批判を買う、同性婚を巡る答弁で“炎上”するといった弱点にも通じている。そんな岸田氏率いる政権は、これからどこへ向かうのか。

第323回
岸田文雄首相が打ち出した「異次元の少子化対策」が波紋を呼んでいる。筆者もこの施策は少子化の抜本的な解決にはつながらず、「対症療法」にすぎないと考えている。そう言い切れる理由と、少子化脱却に向けて日本政府が本当に解決すべき問題について解説する。

第322回
岸田文雄首相が、新型コロナウイルスの位置付けを「2類相当」から「5類」に変更する方針を明らかにし、議論を呼んでいる。この点について、筆者はかねて「5類扱いにすべき」だと主張してきたものの、ここにきて「その考えは少し間違っていたかもしれない」と思い直すようになった。既存の類型に無理やり当てはめ、二者択一で議論することに疑念を抱くようになったからだ。では、感染抑止と経済活動を両立するには、どのような方策が適切なのか。筆者の考えを提案したい。

第321回
先の世界大戦や東西冷戦を経て、人類は世界平和の重要性を学んだはずだった。だが現代では「国家」が再び国際社会の発展を阻害し、人々の生命と財産を奪いかねない存在になっている。いまだにロシアはウクライナへの侵攻を続け、中国は台湾への軍事侵攻を示唆している。ウクライナ紛争における「正義の味方」と思われがちなNATOですら、紛争を利用してロシアを弱体化させたいという思惑が透けて見える。このような状況を変えるには、従来の中央集権体制ではなく、地方自治体や中小規模の国家・地域による「コンパクト・デモクラシー」が必要ではないか。

第320回
岸田文雄首相が打ち出した、防衛費増額の財源を得るための増税策が大きな波紋を呼んでいる。これまで日本の政治家が議論をおろそかにしてきた二大課題である「増税」「安全保障」が重なったのだから、大騒ぎになるのも無理はない。筆者はこの問題において、岸田首相が防衛増税の対象とする税目を「法人税」「所得税」「たばこ税」に限定している点や、専守防衛の原則を守ったまま「敵基地攻撃能力」を持つと主張している点に違和感を持った。その要因と、日本政府が真に議論すべき点について解説する。

第319回
かつてのサッカー日本代表は、海外の著名監督を登用し、欧州や南米のスタイルの導入を目指してきた。だが、それで結果を残せたとは言い難い。今回のカタールW杯では、日本人の森保一監督が率いる代表チームが強豪国を次々と打ち破った。大学教授である筆者は、教育関係者がこの結果から学べるものは多いと感じた。現代の主流である欧米流の教育が、日本の学生に適しているとは言えないからだ。サッカーと教育の両方で「海外流」が必ずしも正解とは限らない理由を、教育者の立場から解説する。

第318回
岸田内閣の支持率が下落し、30%を割り込んだ。「政治と宗教」「政治とカネ」の問題や失言で、閣僚が相次いで辞任しているのだから無理もない。かつて50%台の高支持率を誇った岸田内閣は、なぜ人気が急落するとともに、閣僚の「辞任ドミノ」を招いたのか。その本質的な要因を考察する。

第317回
米国の中間選挙において、共和党は下院で事実上勝利したが、選挙前に予想されていた「レッド・ウェーブ」(赤い波)といえるほどの大々的インパクトは残せなかった。そしてトランプ前大統領は今回も、自身が推した上院議員候補が落選した際に「不正があった」と主張しているようだ。だが、こうした手法が間違いであり、今の米国では通用しないことをそろそろ学ぶべきだ。そう言い切れる理由を、歴史的背景をもとに解説する。

第316回
英国のリズ・トラス前首相が、わずか50日でスピード辞任した。首相交代が頻繁に起きたことで、「英国政治は迷走している」とみる向きもある。だが筆者は、首相の間違いを国民が短期間で見抜いて交代させた英国の体制は恥ずべきものではなく、むしろ「健全」であると評価している。昨今の中国の動きと対比しながら、英国の自由民主主義体制の優位性について解説する。

第315回
クリミア大橋が爆破されたことへの報復措置として、ロシア軍がウクライナへの大規模ミサイル攻撃を行った。「ミクロ」な視点で戦況を見ると、この攻撃によってロシアが再び優位に立ったように思える。だが「マクロ」な視点で国際関係を読み解くと、ロシアは大規模ミサイル攻撃によって自らの首を絞めたといえる。ただし、ロシアが苦肉の策として繰り出した「核の脅し」は侮れず、NATOの結束を分断させる危険性を秘めている。そういえる要因を詳しく解説する。

第314回
安倍晋三元首相の国葬が9月27日に実施される。しかし国葬を巡っては、賛成派・反対派に世論が二分されたままだ。国葬反対論が激しく広がった背景には、安倍元首相の暗殺事件で明らかになった旧統一教会と政治の不適切な関係がある。メディアが連日、自民党議員と旧統一教会との関係を報道したことで「旧統一教会と自民党の強いつながりの中心が安倍氏だったのではないか」という疑念が深まったことが、国葬への厳しい批判の背景にある印象だ。だが実際は、安倍氏だけに責任があるという単純な構図ではなく、旧統一教会と自民党の関係には根深い問題が潜んでいる。その実態を歴史的観点から解説する。

第313回
英国でエリザベス女王が死去し、国葬の様子が日本でも大々的に報じられた。これを機に、英国王(または女王)が持つ世界への影響力の大きさを知った人も多いだろう。日本は今、軍事的・経済的に急拡大を続ける中国との関係性においてリスクを抱えているが、安全保障の切り札として、この「英国」との連携を強化すべきだと筆者は考える。そう言い切れる理由を詳しく解説する。

第312回
安倍元首相の殺害事件をきっかけに、旧統一教会と自民党の関係が問題視されていることなどから、岸田内閣の支持率が急落している。岸田内閣は今後、支持率回復に向け、中小企業や個人への再配分といった「バラマキ戦略」を強化していくだろう。だが、こうした「労働者への分配」は、本来は左派野党が取り組むべき政策だといえる。自民党にお株を奪われることで、野党はさらに存在感を失っていく可能性が高い。その中で、自民党の対抗馬になり得る野党は現れるのか。歴史的背景を踏まえながら考察する。
