野口悠紀雄
GAFAに代表される大手プラットフォーマーが優先的地位を乱用したりするのを独禁法で規制することが検討されているが、プロファイリングされた個人情報が勝手に使われるなど、独禁法で対処できない問題がある。

投機目的の資金流入で高騰した仮想通貨だが最近は、下落が激しい。だが送金手段という観点では送金手数料が下がるので、価格が下落し安定することが望ましい。価格安定化を考えればメガバンクの仮想通貨は期待できる。

仮想通貨での資金調達に規制が強化されようとしている。詐欺まがいの事業が横行し、投資家保護のため必要というが、仮想通貨の理念からすると、市場メカニズムによる適正化が検討されるべきだ。

政府が消費増税対策で検討しているポイント還元は消費の落ち込みを防ぐ効果は疑問だが、遅れているキャッシュレス化を進めるチャンスだ。とりわけ「想通貨決済を広げるきっかけになる可能性がある。

高齢者も働く社会にするにはフリーランサーとしての働き方が増えることが重要だが、今の税制では所得申告の手間がかかり同じ仕事をしても税負担が重くなることが多い。「フリーランサー控除」新設も検討すべきだ。

労働力不足や年金財政を考えれば、これからは高齢者が働く時代だが、中でも雇用延長に頼らずフリーランサーとして働けることが重要だ。そのためには現役時代から準備をしておくことだ。

人手不足緩和で政府が打ち出した新在留資格による外国人労働者受け入れ拡大は弥縫策だ。将来の労働力不足を考えれば限界があり、「永住移民」を認めるかで、十分な議論と周到な準備が必要だ。

高齢者の就労促進は、高齢者の所得や生きがいを確保するには重要だが、日本の将来の労働力不足を解消するのは難しい。働く女性を増やし外国人労働者を活用することが不可欠だ。

年金改革ではマクロ経済スライド強化による年金額の圧縮や、支給開始年齢の引き上げなどの議論があるが、政治的な難しさや世代間公平の問題がある。老後を年金だけに頼らずにすむよう就労年数を延長するのが最善の策だ。

急速な少子高齢化のもとでも年金制度が維持されるとしてきたのは、物価や実質賃金の上昇率を高く仮定しているからだ。この財政検証の“トリック”が実現できなくなり、支給開始年齢引き上げが不可避だ。

雇用延長の議論の背景には、非現実的な成長や賃金の見通しを前提にした「年金財政」の事情がある。年金支給開始年齢を70歳に引き上げないと、「現在の保険料率で100年安心」とはとてもいかないからだ。

株価が27年ぶりの高値をつけたのは、企業の生産性が上がったからではなく、円安で売り上げがかさ上げされる一方で労働分配率が低下したからだ。円安は外的な要因からで株価上昇も続く保証はない。

現実的な見通しとして、物価上昇率2%は、いつになっても達成できない。すると金融緩和について「任期中に脱却」という安倍総理の発言と、「2%達成まで脱却しない」という黒田総裁の発言とは、矛盾することになり、金融政策の先行きについて見通しがつかない。

政府は返礼品競争が過熱するふるさと納税制度の規制強化を打ち出したが、そもそも制度自体が地方自治や地方税の原則から外れ、寄付の崇高な精神を破壊するものだ。見直しではなく廃止すべきだ。

高齢者が働くと損をするのは、医療や年金だけでなく介護保険でも同じだ。高齢者の就労促進をいいながら矛盾している。恵まれた高齢者に負担増を求めるなら資産で自己負担率などを決めるべきだ。

高齢者の就業率を引き上げることが社会的な課題になっているのに、医療保険でも高齢者が働くと過大な自己負担を強いられ、破滅する恐れさえある。自己負担制度を見直すことは不可欠だ。

「骨太2018」で、働くと年金の一部、場合によっては全額が支給停止される在職老齢年金制度の見直しが掲げられた。高齢者の働く意欲をそぐだけでなく高齢者の賃金を低く抑えている可能性もあり、廃止すべきだ。

自民党総裁選が迫るが、このままでは経済政策、中でも消費増税が議論されない可能性がある。「3回目の先送り」となれば、財政赤字が2027年度には内閣府試算より5割以上増え60兆円近くになる。

異次元緩和からの脱却を事実上、進める日銀が金利抑制を続ける新手法を導入したのは、金利抑制をやめれば金利が暴騰する懸念からだ。名目長期金利が物価上昇率プラス1%程度まで上昇する可能性がある。

岡山県の村が仮想通貨を売り出して事業資金を調達する計画を発表した。ブロックチェーンを用いて収益力のある事業ができるかがポイントだが、ふるさと納税より健全な自治体の財源調達手段になる可能性がある。
