
野口悠紀雄
ビットコインゴールドやモナコインといった仮想通貨の資金流失や不正流出が相次いでいる。「51%攻撃」というブロックチェーンそのものが狙われた新しいタイプの攻撃だ。ビットコインでも起こるのだろうか。

データをもとに定型的な記事を書くなど、人工知能の活用は文章作成でも始まっている。AIが文章執筆者の仕事を奪う「敵」になるか、協力を得る「味方」になるかは、文章の内容や質で大きく違う。

AI(人工知能)がビッグデータを活用し、個人の信用度を算出、それをもとに融資をする試みが広がる。貸付審査が自動化されることで金融機関の性格も大きく変わる。ポイントはビッグデータを蓄積できるかだ。

AIやブロックチェーン技術が保険の基本になっているビジネスモデルを揺るがしかねない状況だ。すでに個人ごとの保険料率や特定の事象が起きたときに保険金を払うサービスなどが始まっている。

銀行が発行する仮想通貨を使い実際の店舗で買い物をする実証実験が始まった。安い手数料で送金できる利点があるが、ただ実用化には、価格をどう安定させ投機を防ぐかなどの高いハードルがある。

森友問題での公文書改ざんなど、相次いで発覚した政府文書のずさんな管理の改善策として政府文書を電子化する声が上がっているが、実効あるものにするにはブロックチェーンの導入が不可欠だ。

データからビジネスなどのモデルを導くデータサイエンスが企業経営を画期的に変える可能性がある。グーグルなどがすでに広告で活用しているが、成果を出すには正しい理解と人材育成を急ぐ必要がある。

米国が中国製品への高関税措置を表明し中国も報復を打ち出したが、貿易戦争が激化する可能性は少ない。米中間には巨大なサプライチェーンができており、困るのは双方の国の消費者や企業だからだ。

森友問題を機に政府は電子決裁システム移行を加速させることを打ち出したが、文書改ざんを防ぐには、ブロックチェーンの導入が不可欠だ。エストニアではそのシステムが稼働し「電子政府」が実現している。

米国の長期金利が上昇し日米の金利差が拡大しているのに円高が進んでいる。「投機の時代」が終わり安全志向へと流れが変わったからだが、日本や中国には企業収益が落ちるなど負の影響が出そうだ。

森友学園への国有地売却問題で公文書の書き換えが行われたが、ブロックチェーンで管理すれば、検証が容易にできるから改ざんは難しくなる。政治家の圧力から行政の中立性を守る強い防壁になる。

キャッシュレス化が世界で加速する中で、このままでは日本が中国の電子マネーに送金・決済システムを支配される恐れがある。対応策はメガバンクの仮想通貨の開発を急ぐことだ。それは出遅れを逆転させる。

中国の最先端AI技術が米国を追い抜く日が近そうだ。個人情報の利用に“寛容”な特異な社会構造が究極の監視社会を作り出すだけでなく、AIによる「軍事革命」で軍事力でも優位に立つ可能性がある。

黒田総裁が再任された日銀新体制の役割は、緩和維持」ではなく、できるだけ早く困難な金融正常化に踏み出すことだ。金融緩和こそが、いまや日本にとって大きな成長阻害要因になっているからだ。

世界同時株安は、米国の金融正常化に伴う投機の沈静化が、トランプ政権の登場で一時的に反転していたのが、もとの流れに戻り始めただけだ。日本も円安で企業利益がかさ上げされた局面は終わると考えるべきだ。

ビットコイン投資を考えるのに役に立つのは先物市場だ。売り越しや買い越しのポジションから将来の現物価格の予想の分布などがわかるからだ。いまは投資に慎重であるべきだと、先物市場は警告を発している。

仮想通貨取引所のコインチェックで580億円が不正に引き出されたのは、仮想通貨の信頼性とは全く無関係だ。取引所のずさんな管理が原因の、「起こるべくして起きた初歩的な事故」だ。

投機色を強めるビットコインの取引規制が各国政府から打ち出されているが、証拠金取引規制などの何らかの規制は必要だ。新しい送金・決済手段として育てるため日本は積極的に議論をリードすべきだ。

IT技術を駆使してさまざま金融サービスを生み出すフィンテックで中国企業の台頭が目覚ましい。豊富な資金力とIT人材が成長の支えになっており、日本の金融業が中国フィンテックに席巻される日の到来も絵空事ではない。

ビットコイン価格が急落したのは、先物取引が始まったのと関係がありそうだ。将来の価格に対する「人々の考え」が定量的なデータとして知ることができるようになり、弱気見通しが市場に反映されるようになったのだ。
