
野口悠紀雄
米国と違い日本の消費者物価が上がらないのは、生産性が高く専門的、科学技術的な高度サービス産業が登場していないからだ。これは日本経済が抱える基本的な問題であり金融政策では実現不可能だ。

米中貿易戦争で「痛手」を受けるのはどこなのか。経済では中国の方がより影響を受けそうだが、最も大きな被害を受けるのはアジア諸国だ。一方で政治的には同盟国の信頼を失った米国の打撃は少なくない。

物価目標を掲げていることで日銀は、原油価格の動きやIT化の成果でも「奇妙な論理」を展開せざるを得ない立場になっている。日銀は7月の政策決定会合で、物価目標自体をを撤廃すべきだ。

昨年末のピークの三分の一に下落したビットコインの価格が再び暴騰することはないだろう。投機で儲けよういう人には不都合だが、安い送金手段として期待されていることを考えれば歓迎すべきことだ。

森友問題での公文書改ざんは処分で終わりではない。問題を忘れられないうちに文書管理にブロックチェーンを導入する再発防止策の検討を始めることだ。エストニアに続き英国で実証実験が始まる。

大手IT企業がAIやビッグデータの最先端技術を武器に金融業に進出する動きが加速している。中国ではすでにIT企業がフィンテックの主役だ。日米でも伝統的な金融業の世界を大きく変える可能性がある。

会社の定款を認証する公証人制度は時間やコストがかかり起業がしにくい一因とされてきた。だが公証人をブロックチェーンに置き換えれば問題は解決する。技術革新で旧い既得権益を壊すことができる。

ビットコインゴールドやモナコインといった仮想通貨の資金流失や不正流出が相次いでいる。「51%攻撃」というブロックチェーンそのものが狙われた新しいタイプの攻撃だ。ビットコインでも起こるのだろうか。

データをもとに定型的な記事を書くなど、人工知能の活用は文章作成でも始まっている。AIが文章執筆者の仕事を奪う「敵」になるか、協力を得る「味方」になるかは、文章の内容や質で大きく違う。

AI(人工知能)がビッグデータを活用し、個人の信用度を算出、それをもとに融資をする試みが広がる。貸付審査が自動化されることで金融機関の性格も大きく変わる。ポイントはビッグデータを蓄積できるかだ。

AIやブロックチェーン技術が保険の基本になっているビジネスモデルを揺るがしかねない状況だ。すでに個人ごとの保険料率や特定の事象が起きたときに保険金を払うサービスなどが始まっている。

銀行が発行する仮想通貨を使い実際の店舗で買い物をする実証実験が始まった。安い手数料で送金できる利点があるが、ただ実用化には、価格をどう安定させ投機を防ぐかなどの高いハードルがある。

森友問題での公文書改ざんなど、相次いで発覚した政府文書のずさんな管理の改善策として政府文書を電子化する声が上がっているが、実効あるものにするにはブロックチェーンの導入が不可欠だ。

データからビジネスなどのモデルを導くデータサイエンスが企業経営を画期的に変える可能性がある。グーグルなどがすでに広告で活用しているが、成果を出すには正しい理解と人材育成を急ぐ必要がある。

米国が中国製品への高関税措置を表明し中国も報復を打ち出したが、貿易戦争が激化する可能性は少ない。米中間には巨大なサプライチェーンができており、困るのは双方の国の消費者や企業だからだ。

森友問題を機に政府は電子決裁システム移行を加速させることを打ち出したが、文書改ざんを防ぐには、ブロックチェーンの導入が不可欠だ。エストニアではそのシステムが稼働し「電子政府」が実現している。

米国の長期金利が上昇し日米の金利差が拡大しているのに円高が進んでいる。「投機の時代」が終わり安全志向へと流れが変わったからだが、日本や中国には企業収益が落ちるなど負の影響が出そうだ。

森友学園への国有地売却問題で公文書の書き換えが行われたが、ブロックチェーンで管理すれば、検証が容易にできるから改ざんは難しくなる。政治家の圧力から行政の中立性を守る強い防壁になる。

キャッシュレス化が世界で加速する中で、このままでは日本が中国の電子マネーに送金・決済システムを支配される恐れがある。対応策はメガバンクの仮想通貨の開発を急ぐことだ。それは出遅れを逆転させる。

中国の最先端AI技術が米国を追い抜く日が近そうだ。個人情報の利用に“寛容”な特異な社会構造が究極の監視社会を作り出すだけでなく、AIによる「軍事革命」で軍事力でも優位に立つ可能性がある。
