
真壁昭夫
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界規模で主に2つの変化が起きている。一つ目は、グローバル化が進む中で各国が抱えてきた、成長率の鈍化などの問題が浮き彫りになっていることだ。

新型コロナウイルスの感染拡大によって世界的に大混乱が発生している。その混乱が、これまで国際社会が抱えてきた多くの問題や無理の一部を顕在化している。コロナショックがトリガー(引き金)となり、グローバル化の「負の側面」を浮き彫りにしていることだ。

日々、人々の心理の中で、新型コロナウイルスをめぐる楽観と悲観が交錯している。株式や為替などの金融市場の動きをみると、それがよく分かる。

世界中でコロナショックが猛威を振るっている。中国湖北省武漢市で発生したとされる新型コロナウイルスの感染は、世界中で非常事態宣言が発せられるなど今まで経験したことのない異常事態を巻き起こしている。

新型コロナウイルスの感染が世界に広がる中、隣国である韓国の経済状況が心配だ。文在寅政権は自国経済を守ろうと必死なのだが、3月に入り韓国から投資資金の流出が顕著になっている。一時、韓国の通貨ウォンの対ドル為替レートは過去10年間の安値を更新し、韓国総合株価指数(KOSPI)はリーマンショック発生直後の水準にまで下げた。

韓国や、イタリアをはじめとする欧州各国さらには米国で、新型コロナウイルスの感染が続いている。その勢いはなかなか衰えを見せず、各国政府とも感染の拡大に躍起になっている。それに伴い、人々の動線は大きく阻害され、実態経済・金融市場にも深刻な影響が出始めている。中でも、韓国とイタリアで新型コロナウイルスの感染が大きく拡大した背景には、いくつかの共通点がある。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界経済全体で景気後退への懸念が高まり始めた。特に、ここへ来て原油価格が下落したことは軽視できないリスクだ。問題は、原油価格の下落を契機に米国の経済に下押し圧力がかかる場合、米国経済の安定に支えられてきた世界経済全体で需要が冷え込むことは避けられない。それが現実のものになると、輸出に依存してきた韓国などの景況感は大きく悪化する。

新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が、世界経済の先行きに大きな不透明要因となっている。それに伴い、株式や為替などの金融市場は不安定さを増している。11月に大統領選挙を控えた米国では、FRBが緊急金利引き下げを行って先行き不安の払しょくに努めている。そうした状況下、感染拡大により、特に韓国ではヒト・モノ・カネの動きが急速に停滞しはじめており、今後の経済活動の低迷が懸念される。

今後、新型肺炎が人の移動を大きく制限し、各国企業の生産活動がさらに鈍化する懸念は払しょくできない。中国依存度の高い韓国やわが国などの経済には、一段と厳しい影響が及ぶことが想定される。先行きは楽観できない。特に韓国にとっては、かなり厳しい。

新型コロナウイルスによる新型肺炎の拡大に歯止めがかからない。感染拡大に伴い、世界的にさまざまな分野に深刻な影響が出ている。特に、世界経済に与える影響は、日に日に拡大している。国に物理的に近いわが国や韓国の経済にも重大な影響が及んでいる。特に、韓国の輸出の30%近くが中国(含、香港)向けであり、半導体、鉄鋼、自動車などで業績懸念が高まっている。

中国で発生した新型コロナウイルスによる混乱は、中国だけではなくわが国をはじめ世界経済に重大な影響を及ぼしつつある。経済評論家の中には、今回の新型肺炎とSARSを比較する見方があるが、当時の中国経済の状況と現在ではかなり状況が異なることを頭に入れておく必要がある。

新型肺炎で武漢が閉鎖され中国の経済活動が鈍化した結果、いくつかの国ではかなり深刻な事態が起きつつあるようだ。その一例に韓国がある。

新型肺炎が世界の経済に与える影響は、過小評価すべきではない。中国は世界第2位の経済大国だ。その中国の主要工業都市の一つを封鎖するわけだから、その影響は大きくなることは避けられない。しかも、今回の感染時期が、中国国内で多くの国民が移動する春節と重なったことは今回の騒動を大きくしている。

近年、韓国では、サムスンなど有力企業の労働組合が大規模なストライキを実施するケースが目立つ。労使間の争議が激しくなると、操業度が低下するなど企業業績にマイナスの影響を与える。それは、韓国経済の減速リスクを高める無視できない要因だ。

韓国で、若年層の失業問題が深刻さを増している。OECDによると、2018年、同国の全失業者に占める25~29歳の割合は21.6%に達した。7年続けて、韓国における20代後半の失業者の割合はOECD加盟国内で最悪の状況になっている。

2020年初以降、韓国の金融市場は不安定な展開になっている。韓国ウォンは弱含みで推移しており、株価も外部要因に振れやすい動向を続けている。海外投資家の多くが、韓国経済の先行きを慎重に見ているようだ。

2019年の韓国経済を振り返ると、「不安定化」という一言で表現することができるだろう。そのもっとも大きな要因は、世界的な保護主義的貿易政策の台頭で、貿易依存度の高い韓国経済が大きな打撃を受けたことにある。

2020年4月、韓国で総選挙が実施される。総選挙を控え、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、低迷する自国経済を中心に多くの難問に直面している。最近の世論調査の内容を見ても、支持率は思わしくない。

12月12日、家具・インテリアの小売りを手掛ける大塚家具が、家電量販大手ヤマダ電機との資本提携契約を締結すると発表した。これにより大塚家具はヤマダ電機の子会社となる。大塚家具は自力での再建をあきらめ、ヤマダ電機傘下での経営再建を目指す。

韓国企業が、これまでと違った変化の大波に直面している。最近の世界経済の変化は凄まじい大きさで、しかもその速度が驚くほど速い。韓国企業のみならず、世界の主要企業がこの変化に対応するのは容易ではないだろう。
