真壁昭夫
6月22日、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の事務局長宛に書簡を送付した。その中で韓国政府は、長崎県にある軍艦島をはじめとする世界文化遺産(明治日本の産業革命遺産)の登録取り消しの検討を求めた。世界遺産への登録は国際社会の決定だ。自国の事情だけで、その取り消しを求める韓国は国際社会のルールを軽視しているとしか思えない。

6月16日、北朝鮮が開城(ケソン)にある南北共同連絡事務所を爆破した。それからうかがえるのは、北朝鮮のいら立ちの大きさだ。北朝鮮側は、韓国の文大在寅統領の宥和(ゆうわ)の呼びかけを一切無視している。というよりも、北朝鮮は文大統領を侮蔑する態度を鮮明にしており、同大統領を全く相手にする意思はないと宣言しているようだ。

足元で、コロナウイルスの感染拡大は一つのヤマを越えたようだが、世界経済の本格的な回復にはまだ時間が掛かりそうだ。世界の貿易量は依然として低水準にあり、貿易依存度の高い国へのマイナスの影響はかなり大きい。韓国の経済状況も厳しい状況が続いている。

5月25日、米ミネソタ州ミネアポリスにてアフリカ系米国人の男性が白人警察官に暴行され、亡くなった。その状況を撮影した動画が拡散し、米国各地で人種差別に反対するデモが起き、一部では暴動にまで発展している。トランプ大統領はデモ参加者を“悪党”と批判し、「略奪が始まれば銃撃も始まる」と力づくで抑え込む姿勢を示している。

コロナショックによる経済の低迷や、米・中の対立の激化などにより世界の貿易取引が減少している。貿易量の減少は世界経済全体にとって大きなマイナス要因だ。輸出依存度の高い諸国、特に韓国経済にとってかなりの逆風だ。

コロナショックを境に、国際社会における米国と中国の対立がし烈化している。WHOをはじめ国際機関において中国が発言力を強めているのに対し、米国のトランプ大統領は脱退をも辞さない強い姿勢を示している。

4月、韓国では、一旦、新型コロナウイルスの感染拡大が一服したかに見えた。総選挙に勝利し左派政権の基盤強化を達成できた文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、「自らの感染対策は世界標準であり、同国が世界をリードする」と強調した。それに伴い韓国政府は経済活動を再開したが、5月に入りソウルのクラブで集団感染が発生した。国民の間でも、新型コロナウイルス感染拡大の「第2波」への懸念が高まっている。

アフターコロナに「IT後進国」日本の国際競争力が失墜する理由
最近、今年1~3月期の主要企業の業績が発表され、コロナ禍の渦中での各国の主要企業の収益状況が明らかになりつつある。その中で、わが国と欧州の主要企業の業績が前年同期比で7割から8割減と大きく落ち込む一方、5Gや通信分野に強みを持つ米国や中国では企業の純利益が前年同期比で4割程度減少と健闘していることが注目される。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、現在、世界経済は第2次世界大戦後に経験したことがない重大な変化に直面している。その動きは早く、しかも振れ幅が大きいため、対応するのが難しい状況になっている。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界規模で主に2つの変化が起きている。一つ目は、グローバル化が進む中で各国が抱えてきた、成長率の鈍化などの問題が浮き彫りになっていることだ。

新型コロナウイルスの感染拡大によって世界的に大混乱が発生している。その混乱が、これまで国際社会が抱えてきた多くの問題や無理の一部を顕在化している。コロナショックがトリガー(引き金)となり、グローバル化の「負の側面」を浮き彫りにしていることだ。

日々、人々の心理の中で、新型コロナウイルスをめぐる楽観と悲観が交錯している。株式や為替などの金融市場の動きをみると、それがよく分かる。

世界中でコロナショックが猛威を振るっている。中国湖北省武漢市で発生したとされる新型コロナウイルスの感染は、世界中で非常事態宣言が発せられるなど今まで経験したことのない異常事態を巻き起こしている。

新型コロナウイルスの感染が世界に広がる中、隣国である韓国の経済状況が心配だ。文在寅政権は自国経済を守ろうと必死なのだが、3月に入り韓国から投資資金の流出が顕著になっている。一時、韓国の通貨ウォンの対ドル為替レートは過去10年間の安値を更新し、韓国総合株価指数(KOSPI)はリーマンショック発生直後の水準にまで下げた。

韓国や、イタリアをはじめとする欧州各国さらには米国で、新型コロナウイルスの感染が続いている。その勢いはなかなか衰えを見せず、各国政府とも感染の拡大に躍起になっている。それに伴い、人々の動線は大きく阻害され、実態経済・金融市場にも深刻な影響が出始めている。中でも、韓国とイタリアで新型コロナウイルスの感染が大きく拡大した背景には、いくつかの共通点がある。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界経済全体で景気後退への懸念が高まり始めた。特に、ここへ来て原油価格が下落したことは軽視できないリスクだ。問題は、原油価格の下落を契機に米国の経済に下押し圧力がかかる場合、米国経済の安定に支えられてきた世界経済全体で需要が冷え込むことは避けられない。それが現実のものになると、輸出に依存してきた韓国などの景況感は大きく悪化する。

新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が、世界経済の先行きに大きな不透明要因となっている。それに伴い、株式や為替などの金融市場は不安定さを増している。11月に大統領選挙を控えた米国では、FRBが緊急金利引き下げを行って先行き不安の払しょくに努めている。そうした状況下、感染拡大により、特に韓国ではヒト・モノ・カネの動きが急速に停滞しはじめており、今後の経済活動の低迷が懸念される。

今後、新型肺炎が人の移動を大きく制限し、各国企業の生産活動がさらに鈍化する懸念は払しょくできない。中国依存度の高い韓国やわが国などの経済には、一段と厳しい影響が及ぶことが想定される。先行きは楽観できない。特に韓国にとっては、かなり厳しい。

新型コロナウイルスによる新型肺炎の拡大に歯止めがかからない。感染拡大に伴い、世界的にさまざまな分野に深刻な影響が出ている。特に、世界経済に与える影響は、日に日に拡大している。国に物理的に近いわが国や韓国の経済にも重大な影響が及んでいる。特に、韓国の輸出の30%近くが中国(含、香港)向けであり、半導体、鉄鋼、自動車などで業績懸念が高まっている。

中国で発生した新型コロナウイルスによる混乱は、中国だけではなくわが国をはじめ世界経済に重大な影響を及ぼしつつある。経済評論家の中には、今回の新型肺炎とSARSを比較する見方があるが、当時の中国経済の状況と現在ではかなり状況が異なることを頭に入れておく必要がある。
