真壁昭夫
新型コロナウイルスの感染再拡大と、変異種ウイルスの発生によって、世界的に経済の停滞感がますます強まっている。実体経済と比較すると、株式などの金融市場の動きはしっかりしている。このような実体経済と金融市場の「乖離」のほか、もう一つ気になる「乖離」がある。この乖離を表したものが2021年の世界経済のキーワードの一つ「K字型」である。詳しく解説しよう。

国際社会における中国への批判が高まっている。日米豪印の4カ国に、英独仏の欧州3カ国も加わり、安全保障面からの対中包囲網は強化されている。国際社会における中国の立場はかなり厳しい状況に置かれることとなった。各国の対中姿勢の厳格化によって特に影響を受けると考えられるのが、経済面で中国を重視してきた文在寅政権下の韓国だ。

世界的にコロナ感染が再拡大し、実体経済が停滞する一方、ワクチンに対する期待拡大で株価が上昇するなど、期待と実態の乖離が鮮明化している。ワクチンへの期待が先行して株価が上昇する「ワクチン相場」の様相を呈している。しかし、感染の再拡大もあり、主要国の実体経済は厳しい。

12月8日、韓国の文在寅大統領が、初めてTPPへの加盟に意欲を示した。それには3つに理由が考えられる。TPPの当初の目的とその後の変遷とともに、解説しよう。

中国が戦略物資などの輸出管理を強化する「輸出管理法」を施行した。コロナショックを境に、中国の輸出シェアは高まった。輸出管理法の施行は、世界経済の円滑な運営を阻害する恐れがある。当然、わが国や、アジア新興国の経済への影響も軽視できない。

米国のバイデン次期大統領は政権の移行に向けて、閣僚人事を発表し始めた。その中で、バイデン政権で外交問題を扱う国務長官にアントニー・ブリンケン氏が起用されることは重要だ。同氏は、中国と北朝鮮に対して厳しい姿勢を持つことで知られる。ブリンケン氏起用によって、中国と韓国を取り巻く環境の厳しさは増すだろう。

11月15日、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、およびアセアン10カ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の計15カ国が「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定」に署名した。

米国大統領選挙で民主党のバイデン候補の当選が確実となり、政権の移行に向けた動きが進み始めている。その中で注目を集めるのがバイデン氏の対中国政策だ。基本的には対中国の強硬姿勢は続くとみられるものの、具体的な政策運営は未知数の部分もある。米・中の2大国の関係は、世界の政治・経済、安全保障にも大きな影響を与えることは間違いない。

9月3日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は。190万人の雇用創出を目指す「韓国版ニューディール計画」の一環として「ニューディールファンド」の創設を発表した。文政権は、財政資金から3兆ウォン、政府系金融から4兆ウォン、民間金融機関と国民から13兆ウォンの計20兆ウォン(約1.8兆円)を調達し、2021年からの5年間でバッテリーやインターネット関連産業や環境対策事業などに投資する。基本的に、運用から生じる損失は公的資金で補填される。また、得られた配当は税制優遇される。

今年7~9月期、韓国の実質GDP(国内総生産)成長率は前期比1.9%増だった。GDPの中身を見ると、輸出がプラス成長を支えた格好だ。コロナショックを境に、韓国経済は輸出依存度を一段と高めているようだ。その状況下、韓国の輸出を支えてきた現代自動車が営業赤字に陥った。

10月15日、K-POPの人気グループ、「BTS(防弾少年団)」が所属する韓国の芸能事務所、「ビッグヒットエンターテインメント(ビッグヒット)」が韓国取引所にIPO(新規株式公開)を果たした。13万5000ウォンの公募価格に対し初値は27万ウォンをつけ、その直後に株価は35万1000ウォンに急上昇した。しかし、その後株価は下落し、20日まで4日続落した。

足元、主要国の自動車販売状況を見ると、コロナ禍からの回復が鮮明化している。中でも、中国での回復が際立っている。9月に入り、米国でも徐々に新車販売台数が持ち直している。わが国でも自動車需要は持ち直しの兆しが出ている。わが国経済にとって、米中をはじめとする主要国の自動車需要の回復は景気下支えに重要だ。

新型コロナウイルスの感染拡大などもあり、世界の自動車産業は依然として厳しい状況にある。自動車産業が経済の大黒柱の地位を占める日独では、雇用の先行きにも不透明要因がある。そうした状況下、EV(電気自動車)の有力メーカーであるテスラの成長期待が高まっている。

9月23日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、事前収録された国連での演説で、「終戦宣言こそが朝鮮半島の非核化と恒久的な平和に必要」と述べた。その発言によって、文氏は終戦宣言の実現に向けて国際社会に協力を求めたとみられる。

最近、中国の動画配信企業であるTikTok(ティックトック)の扱いを巡って、米国と中国の対立が高まっている。その背景には、両国のIT分野における覇権国争いがある。もっと突き詰めると、米国の自由資本主義体制と、中国の国家資本主義体制の衝突が激化する構図が明らかになる。その争いの構図を冷静に見ると、今のところ、米国よりも中国の方が優勢に見える。

8月28日、安倍首相が潰瘍性大腸炎の悪化を理由に辞任を表明した。それによって、9月14日、自民党は総裁選を実施した。その結果、安倍政権の経済政策=“アベノミクス”の継続を謳う菅義偉官房長官が総裁に選ばれた。

コロナショックの発生をきっかけに、EC(電子商取引)などを手掛ける大手ITプラットフォーマーの重要性が高まっている。それに伴い、経済のデジタル化を支える半導体や5G通信機器関連の企業の収益は顕著に増加している。その一方で、これまで経済の中心的存在だった大手自動車メーカーの業績は厳しい。そうした状況を見ても、世界経済の中で大きな構造変化が起きていることが分かる。

8月28日、安倍晋三首相が持病の悪化を理由に辞任を表明した。9月14日に自民党は投開票を行い、新しい総裁を選出する予定だ。米中の対立が先鋭化する中、わが国の政策運営の重要性は一段と高まっている。これまで、トランプ大統領の懐に飛び込んで、米国と良好な関係を維持してきた安倍首相が退陣するとなると、米中との関係をいかに運営するか、次期政権は長期の視点に立った政策を運営することが求められる。

米国や欧州諸国との関係悪化もあり、国際社会で中国の孤立感が高まっている。その背景には、新疆ウイグル自治区での人権問題や、香港の国家安全維持法の施行、新型コロナウイルスの感染などをめぐって、中国と米国や欧州諸国、さらにはオーストラリアなどとの関係がややこじれていることがある。

最近、米トランプ政権の対中国の強硬姿勢が一段と鮮明化している。その背景には、11月の大統領選挙に向けて、中国に対する強硬策によって点数稼ぎをしたいトランプ氏の思惑などがある。当面、トランプ政権は対中圧力をさらに強まることが予想される。
