
後藤謙次
大型連休が明けると、隣国韓国に新しい大統領が誕生する。尹錫悦。就任式は5月10日。尹は冷え切った日韓関係の改善に意欲を示す。そのため連休前には国会副議長の鄭鎮碩を団長とする政策協議代表団を日本に送り込んできた。焦点は首相の岸田文雄と面会ができるかどうかにあった。

「みんなが『大丈夫か。頼りない顔だな』と言っていたが、やらせてみたらそこそこやる」。自民党の副総裁、麻生太郎による岸田文雄首相評だ。4月17日の講演で飛び出した麻生らしい相変わらずの上から目線で、岸田を持ち上げた。麻生が口にした「そこそこやる」が具体的に何を指すのかは判然としないが、確かに昨年10月の首相就任から半年を経過しての内閣支持率は「そこそこ」以上の安定感を示す。

「ここは1議席よりも将来の自民党政権の安定を目指すべきだ」。自民党の選挙戦全体の戦略・戦術に大きな影響力を持つ幹部の意向が実現しつつある。夏の参院選まで残すところ約2カ月。焦点の32ある改選1人区の一つ、山形選挙区の公認調整を巡り、自民党執行部は「不戦敗の選択」に向かうことになった。

米大統領のジョー・バイデンがポーランドの首都ワルシャワで行った演説の波紋が広がる。「この男は権力の座に居座ってはならない」。ウクライナに軍事侵攻したロシア大統領のプーチンを名指しで口を極めて批判したことだ。

ロシアがウクライナに武力侵攻したのは2月24日。圧倒的な戦力差から国際社会は短時間でロシア軍がウクライナ軍を制圧するとみていた。しかし、戦端が開かれて1カ月以上経過したが、伝わってくる情報は「ロシア苦戦」「戦闘は膠着状態」など長期戦の見通しを示すものばかり。侵攻に踏み切ったロシア大統領のプーチンは誤算続きといっていい。その焦りからなのだろう。一般市民への無差別攻撃や極超音速ミサイルの発射など見境のない武力行使を開始した。

昨年9月に他界した自民党の平成研究会(茂木派)前会長、竹下亘(享年74)の「お別れの会」が3月14日昼、東京・芝公園の東京プリンスホテルで開かれた。コロナ禍のためセレモニーは省略され、参列者は大きな遺影の前に献花して別れを告げた。参院予算委員会の休憩時間を利用して首相の岸田文雄も駆け付けた。司会は自民党組織運動本部長の小渕優子が務め、参列者の中には亘の実兄で元首相、竹下登ゆかりの関係者も多く見られた。さながら旧竹下派の“同窓会”のような空気が支配した。

ロシアによるウクライナ侵攻を巡るニュース一色の中、国内政治では自公連立に国民民主党を加えた「自公国3党連立」構想がジワジワと進行中だ。国民民主の自民への急接近は突如として表面化した。2022年度政府予算案に賛成したからだ。国民民主党代表の玉木雄一郎は2月22日、衆院本会議の賛成討論で理由を語った。

「存在の耐えられない軽さ」というアメリカ映画があった。米ソ冷戦時代のチェコスロバキアで生まれた民主化運動、「プラハの春」をモチーフにした約3時間に及ぶ長編作。美しいプラハの街は突然現れた旧ソ連軍の大型戦車によって押しつぶされる。プラハの街を走行する戦車の姿がモノクロのニュース映像として差し込まれ、ユニークな題名と共に強烈な印象を残す。その「プラハの春」から54年。今度はロシアの戦車がウクライナの首都キエフ近郊に進軍した。映画のプラハとキエフが重なった。

かつて大平正芳内閣で徴税の効率化や脱税の防止のため、「納税者番号制度」に近い「グリーンカード制度」が法制化された。ところが、実施段階になって金融機関などの強い反対に遭って制度そのものがつぶされたことがある。この導入・廃止の両方に関わったのが当時の自民党の実力者、金丸信だ。

「外国企業にとって日本が長期的に信頼できるパートナーかどうかに疑問を生じさせる」。こう語ったのは在日米国商工会議所(ACCJ)特別顧問のクリストファー・ラフルアーだ。韓国の「ハンギョレ新聞」が2月11日、東京発の特派員電で報じた。ラフルアーは元米国の駐マレーシア大使だが、日本では元首相、宮澤喜一の娘婿として知られる。宮澤の親戚でもある首相、岸田文雄も「何度も会ったことがある」と語るほどの旧知の米国人だ。

岸田文雄政権の行方を左右する参院選まで約5カ月。ところが自民党の選挙態勢がいまだに整わない。参院選の前哨戦ともいえる長崎、石川両県知事選では保守分裂のまま投票日に向かう。自民党内からも「本当に参院選までに間に合うのか」(党長老)の声が漏れる。

北朝鮮によるミサイルの発射は年が明けてから7回に及ぶ。性能向上も著しい。とりわけ1月30日朝の発射は中距離弾道ミサイルで日本列島全域が射程に収まるものとみられている。官房長官の松野博一は「烈度の高いミサイル」という広辞苑にも載っていない言葉を使って抗議の意思を表明した。

新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大が止まらない。1月22日には国内の新規感染者が初めて5万人を超え、「まん延防止等重点措置」の適用対象は34都道府県に拡大した。オミクロン株の猛威は永田町にも及んだ。

首相の岸田文雄にとって初めての通常国会が1月17日に召集された。会期は150日間で6月15日まで。閉幕直後には3年に1回の参院選が巡ってくる。投開票日は7月10日になることがほぼ動かない。いわば「参院選直結型国会」だ。参院選は首相の解散権の行使によって実施される衆院選と違って、選挙の期日を決める与党側の裁量権は極めて限定的だ。

新型コロナウイルスの「オミクロン株」による感染拡大が止まらない。あっという間に全国に広がり、歯止めがかからない。想定外だったのは在日米軍基地に由来するとみられる深刻な感染拡大だろう。全国の7割の米軍基地が集中する沖縄県では、1月8日の感染者数は過去最多の1759人に達した。こうした感染拡大は昨年末から続いており、日本政府の対応に不満、批判が広がる。沖縄県知事の玉城デニーは怒りを込めた。

岸田文雄が首相に就任したのが2021年10月4日。それからちょうど3カ月の節目と重なるように22年の新年が明けた。岸田側近が「風格のようなものが出てきた」と語るように岸田政権は安定軌道に入ったかに見える。

2021年12月9日の衆議院本会議場。9月17日に74歳で死去した当時の竹下派会長、竹下亘の追悼演説が行われた。議場2階の傍聴席で息子、実弟ら遺族が演説に聞き入った。追悼演説で竹下を送ったのは、初当選同期の自民党組織運動本部長の小渕優子だった。

2022年の政治は7月に想定されている参院選を軸に展開される。首相の岸田文雄が長期政権を担えるかどうか、全て参院選の結果に懸かっているといっていい。参院選は衆院選のように政権を選択する選挙ではないが、過去の例を見れば分かるように、「政権が倒れるきっかけになる選挙」である。岸田にとっては“中間試験”の意味を持つ。

ここ1カ月で新聞の政治面に「派閥呼称のおことわり」との見出しが付いた小さな記事が3回も掲載された。共同通信はこんな記事を配信した。「自民党細田派が安倍晋三元首相を新会長に決定しましたので、今後の呼称を『安倍派』とします」(11月11日)。「自民党旧竹下派が茂木敏充幹事長を新会長に決定しましたので、今後は呼称を『茂木派』とします」(11月25日)。いずれも新会長就任に伴うものだったが、12月2日の「おことわり記事」は趣を異にした。

「二階派の一人は小林議員でお願いします」。今年10月、首相の岸田文雄は新内閣の組閣に当たって自民党の二階派幹部の林幹雄に、まだ当選3回(その後4回)の小林鷹之の入閣を要請した。いわゆる「一本釣り」だった。しかも小林の担当は岸田内閣で創設された経済安全保障担当相。岸田の思いが小林の人事に凝縮されていた。岸田が小林に白羽の矢を立てたのは、まだ日本では耳慣れなかった経済安全保障分野の政策ではトップグループの一員だったからだ。
