ユーロ相場は“債務ブレーキ”解除で反発、それでも消えない「1ユーロ=1ドル」パリティ懸念Photo:NurPhoto/gettyimages

ユーロドル上昇のきっかけ
ドイツ財政支出拡大への期待

 ユーロは昨年秋の米大統領選以降、下落が進み、1月半ばには対ドルで心理的節目としてパリティと呼ばれる1ユーロ=1ドル割れが視野に入る展開となった。

 ただ、ユーロはその後、下げが一服。1.02~1.05のレンジ内での動きが続いたが、3月初めにレンジの上限である1.05を上抜けると、一時1.0950と昨年11月上旬以来の高値に回復した。

 ユーロ買戻しの材料となったのが、2月25日に行われたドイツ連邦議会の総選挙である。同選挙では、政権与党であった社会民主党(SPD)が歴史的な敗北となる一方、極右と呼ばれるドイツのための選択肢(AfD)が第2党に大躍進し、2005年から2021年まで政権を担っていたキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が第1党に返り咲いた。こうした選挙結果を受け、景気支援への期待などからユーロ高となった。

ドイツで安定政権樹立
債務ブレーキ憲法改正の裏技も

 ドイツの総選挙で見逃せないポイントがある。それは富裕層への増税方針を打ち出し、直前で支持率を上げた左翼党が前回から36議席増と躍進した一方、10議席を有していたザーラ・ワーゲンクネヒト同盟と91議席を有していた自由民主党の両党が全ての議席を失ったことである。

 左翼党は旧東ドイツ共産主義政権の流れをくむ左派政党であり、ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟は左翼党から分かれて昨年発足した左派政党である。自由民主党は経済的自由主義や個人の自由を重視する中道右派のリベラル政党で、2024年11月まで「信号連立」(SPD+緑の党+自由民主党)の形で連立政権を担っていた。