学校では「逆参観日」を導入すべき?:
キャリア教育の不備は、縦割り行政の弊害

ムーギー 竹中先生の進む道は、そこで決まったわけですね。本書『一流の育て方』でとったアンケートによれば、どの道に進むか、どんな夢を抱くかは、若いころに人から受けた刺激が原動力になっている場合が非常に多いという結果が出てきます。子どもには、憧れる人の言うことを真に受ける純粋さがあって、それが職業の選択肢となっていくわけですね。

竹中 そう、そのとおり。親と同じ職業を目指す人が多いのも必然だと言えるでしょう。

ムーギー しかし、日本には世の中にはどんな仕事があるのか、どんな職業があるのかといった選択肢を知る機会が少なすぎると思います。幼少期からより多くのキャリアを示してあげれば、働くことへのモチベーションやより適切な職業選択につながると思うのですが。

竹中 ええ、キャリア教育はまったく不十分ですね。私ね、昔から「逆参観日をつくればいい」と言っているんです。

 親が学校に行ってどんな授業をしているか見るように、子どもが親の仕事場に行ってどんな仕事をしているのか見ればいいってね。

ムーギー なるほど、それはいいキャリア教育になりそうですね。

竹中 ただし、キャリア教育を教育に組み込むのはむずかしいことなんです。なぜなら、「キャリア」と名のつくものは厚生労働省の管轄で、教育は文部科学省の管轄だから。教育と職業は本来シームレスなものなのに、完全に縦割りになっているんです。しかも、文句を言ってくる人もいるでしょう?

 経済のことを教えると「汚いカネのことなんかを子どもに……」とか、政治のことを教えると「思想教育だ」とか。いまの教育は、子どもを社会から隔離するようなシステムになっているんですよ。

ムーギー 職業選択という意味でも、社会の基礎を教える場という意味でも、子どもへのキャリア教育はもっと力を入れるべきところですよね。