最近、わが国の電気産業の業界で、企業が特定の分野から撤退するとのニュースを見かける。三菱電機や三洋電機が携帯電話から撤退を決めたのに続いて、日本ビクターが、薄型テレビから撤退すると報道された。こうした動きの背景には、世界的な家電業界の競争激化と、企業が得意分野に経営資源を集中する姿勢がある。

 家電業界は、一定のマーケットシェアを維持することによって収益を維持することが可能な、いわゆる“スケール・メリット追求型”の産業分野だ。特定の分野で、中・長期的な損益分岐点を上回るシェアを維持できない企業は、当該分野から撤退を余儀なくされる可能性が高い。わが国の電機業界では、こうした“選択と集中”の動きが続くと見られ、それがM&Aを含めた業界再編につながることも想定される。

経済のグローバル化で
巨大企業はより強く

 経済のグローバル化という言葉がある。グローバル化の意味は、経済活動に実質的な国境が無くなることだ。具体的には、人、モノ、金、情報の経営資源が、いとも簡単に国境を越え世界中を駆け巡る。そうなると、1つの国単位の国民経済という従来型の経済学のコンセプトは殆ど意味を持たなくなる。

 それに伴い、企業は、経済活動の範囲を積極的に拡大し、販売対象の市場を国内から、広く世界へと広げることになる。それと同時に、新製品の開発や、新しい技術を生み出すための試験研究費の支出も、飛躍的に拡大することが必要になる。

 それに対応するため、企業は、M&Aなどの手法を駆使して、企業規模を拡大する方向に進むことが有利になる。常に新しい製品や技術を生み出し、その販売ルートを世界に広げるためには、多くの経営資源が必要になるからだ。それらの資源を持っている企業は、厳しい競争の中でも生き残ることができる一方、十分な経営資源を持たない規模の小さな企業の生き残りは難しくなる。