哲学者の歴史をひもといて、キャラを設定する
原田 今回の本は、哲学者をイケメンっぽいキャラクターにしたり、ギャグはおじさんっぽくしたりしましたけれど、堀田さんの本はみんな「美少女」になっていますよね。クールジャパンな哲学書みたいな感じで。
堀田 外国では笑われましたね。「日本人はなに考えてんだ」って(笑)。
原田 (笑)。なぜ女の子で書こうと思ったんですか?
堀田 ひとつは「もえたん」(英語学習と二次元美少女を組み合わせた英語参考書)のように、親しみやすいキャラクターをインタフェースにして、難しいものを紹介するという作品企画の流れがあり、僕も哲学でこれをやってみたいと考えていたんです。
もうひとつ、僕、なんというか悪戯めいたものが好きで。高校のころに読んだホルヘ・ルイス・ボルヘスの本に、バークリの唯心論が出てくる短編があるんです。それはかつて本当にあった、「ありもしない人物や風物が載ってしまった辞典」にインスパイアされているんだろうな、と感じる作品なのですが、ああした、かっこつけた「戯れ」がすごく好きで。だから、スピノザがパンチラをするようなオタク的な展開と、古典哲学が共存するものを書いてみたいと思っていました。
原田 キャラクター作りは、もともとの哲学者をベースにして組み立てたのか、ラノベのヒロインたちを哲学者に当てはめたのか、どちらで書かれたんですか?
堀田 ベタですけれど、例えばカントであれば風紀委員であったりとか、ニーチェは感情の動きが激しい人だったりとか。一番難しかったのが、ハイデガーでした。
原田 やっぱり(笑)。私もハイデガーのキャラ設定では編集者の方と相当話し合いましたもん。ハイデガーは真面目なのか不真面目なのか人物像を伝えるのが一番難しかったです。
堀田 ハイデガーの『存在の時間』って未完じゃないですか。結局、冒頭で提示された問題は解決されず、別なところで大きな影響を与えてしまった。ナチスへの協力したのではないかという問題もあり、「山師説」さえある。難しかったのですが自分は、「生徒会長」という、それだけではどちらにも行けるキャラクターにしました。原田さんも、ハイデガーは大学教授にしていますものね。
飲茶 僕の本では、山師説を少し多めに取り入れています。大きい話を言ったんだけど結局最後の肝心なことは言っていなくて、それでも人を引き付けるのがとてもうまい人で、それがすばらしい人生論になっていて、そのまま歴史に残った…という。『エヴァンゲリオン』みたいな感じですかね(笑)。
堀田 空白をみんなが埋めようとする(笑)。
飲茶 エヴァってまだやっているんでしたっけ?
堀田 ええ、新劇場版が続いていて、そのお客さんが「シン・ゴジラ」にも入ってきていたりしているそうです。
飲茶 じゃあハイデガーもいつかそのうち?(笑)最後の完結品が生まれてほしいですね。