実現すれば最強の百貨店といわれたエイチ・ツー・オー リテイリングと高島屋の経営統合は、夢に終わった。折しも、阪急阪神百貨店の“本丸”梅田は全国でもほかに例を見ないほどの百貨店大激戦区になる。絶対死守が命題の梅田での勝算、そして高島屋との統合なき後の成長戦略について検証した。(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)

Photo by Saori Umebara/REAL
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 関西一の商業集積地、大阪・梅田。現在、そこかしこで工事のクレーンが唸りを上げている。

 来年の春にJR大阪三越伊勢丹が新たに出店し、これに対抗すべく大丸梅田店と阪急うめだ本店が増床工事に乗り出している。2012年には、なんと百貨店の売り場面積は今日の2倍にもふくれ上がり、全国でも例を見ない百貨店大激戦区となる(上マップ参照)。

 この異常事態に備えて、すでに各百貨店は経営的なリスクヘッジの手を打っている。

 三越伊勢丹ホールディングスは、JR西日本が過半出資する会社に経営主体を移してしまった。J.フロント リテイリング傘下の大丸梅田店は、上層階に東急ハンズなどの大型テナントを導入。売り場の拡大とともに家賃負担が増えるが、床を転貸することで「実質的に借りなかったことにする」(村田荘一・大丸梅田店長)算段だ。

 これに対して、エイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)傘下の阪急うめだは、建て替え費用600億円と同地区最大。H2Oだけが、この大激戦区・梅田に両足を突っ込むかたちになった。これには「梅田では負けられない」同社の事情がある。

 H2Oは、07年に阪急百貨店と阪神百貨店の経営統合で誕生したが、売上高は大手百貨店の半分。08年には高島屋との経営統合を模索したが、今春、破談に終わり、単独で生き抜く道を選んだ。

 上表に見られるように、H2Oは規模こそ小さいが、収益性・財務共に業界トップを誇る。これを支えているのが、関西で圧倒的な売上高とブランド力を誇る阪急うめだで、収益的には“梅田一本足打法”だ。

 ほかの百貨店のように「万が一梅田店の収益が厳しくなっても全国に収益を支える店舗を持っている」(奥田務・Jフロント会長)というのとは訳が違うのである。