→答えは、

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重ねる技術:
「不必要な差別化」を狙わない

 東のディズニー、西のUSJといわれるなかで、USJが「映画専門店」というユニークなポジションを捨ててしまっていいのかと思われた方がいるかもしれません。ディズニーとの差別化がなくなって、普通のテーマパークになってしまうという危惧ですね。

 ここで考えるべきポイントは、「何のための差別化なのか」ということ。

 USJのマーケティング責任者は、「USJはディズニーと差別化しなければいけないのか?」という疑問を投げかけました。

 事実、東京と大阪には新幹線代など交通費の溝があり、東京から訪れるお客さんは全体の1割にも満たなかったのです。

 自社にとって当たり前になっている「制約」をゼロベースで見直すことは、もちろん簡単なことではありません。そこで重要なのが、「顧客は何を求めているのか」という、お客さんの本音に向き合うことです。

企業の強み・思い:
開業初年度に達成した1100万人の入場者数まで
もう一度復活させたい

 2001年、幸先のいいスタートを飾ったUSJですが、翌年に発覚した火薬の使用量違反や工業用水が混ざってしまった飲料問題などの不祥事が相次ぎ、人気は低迷の一途をたどっていました。さらにこのような物理的な問題よりも難しい問題を抱えていたのです。

 それは「間違えたこだわり」です。たとえば、「ピーターパン」のネバーランドに登場する海賊船に莫大な投資をし、劣化をリアルに再現したエイジング塗装をしていましたが、入場者からは「海賊船があまりにボロボロで古くて汚い」と不評だったことも。また映画に特化していたため、テーマパークにもかかわらず、小さな子どもが楽しみきれないという問題を抱えていました。映画のテーマパークとしてのこだわりが、生活者とUSJの溝を深めていたのです。

 そこに登場したのが、P&Gのマーケターとして活躍していた森岡毅氏です。無理に差別化してマーケットを小さくするのではなく、「家族連れが行きたくなるテーマパークにしてしまったらいい」とシンプルに考えたのでした。

 そもそものUSJの強みは、関西ではどこを見渡してもないハリウッド仕込みのエンターテインメントをつくる技術です。この他社にはない強みを生かして、映画に縛られずに挑戦していくことに生き残りの道を見出したのです。

生活者の本音:
子どもに特別な体験をさせてあげたい

 では、関西の生活者は何を求めていたのでしょうか?シンプルな問いですが、消費者サイドは、別にディズニーとの差別化を求めているわけではありませんでした。ディズニーランドに4人家族で行こうと思うと、新幹線代だけでも10万を超えてしまい結構な負担になってしまいます。

 関西にはディズニーランドのような世界観までつくり込まれたテーマパークがありませんでした。もしもUSJが家族連れで楽しめる遊園地だったなら、行きたいと思う家族は多くいたわけです。つまり、関西在住のお父さん、お母さんの本音は、「子どもに特別な体験をさせてあげたい」という欲求だったのです。

重なりの発見:
その差別化は何のための差別化なのか?

 こうしてUSJは、映画という自分たちを縛っていた制約を取り払い、家族で行けるテーマパークに生まれ変わりました。そうしたことで、「ワンピース」「モンスターハンター」「妖怪ウォッチ」をはじめとする人気コンテンツとのコラボが実現し、自らの可能性を広げたのです。

 この取り組みは、関西でもディズニーランドのように世界観がつくり込まれたエンターテインメントを体験させたいという家族連れのニーズと重なり、結果は皆さんがご存じの通り、2015年度には1390万人が訪れる世界第4位の人気テーマパークに生まれ変わりました。

 どの会社にも長年当然のように行われている「不必要な差別化」が存在します。その差別化を大切にするあまり市場のニーズに合わせられないということがないよう、「その差別化は何のための差別化なのか?」と常に疑問を持ち続けましょう。


参考文献
「USJの入場者数、東京ディズニーシーを抜く…世界4位に」、RBB TODAY、2016年5月27日配信

・『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか』(森岡毅著・KADOKAWA)