年末になると「今年の10大ニュース」などのランキングが、様々なメディアから発表される。10大ニュースくらいだったら主な出来事をリストアップして、アンケートをとって集計するくらいでまとまるもの。
けれど、「今年注目を集めたタレント10人」「政治家10人」「観光地10ヵ所」「飲食店10選」とランキングの対象が細かくなっていくと、コトは簡単ではない。「なんとなく」の印象だけで順位を決めるわけにはいかなくなる。
トップ3くらいまでは文句が出なかったとしても、「なんでこっち(この人)が4位で、あっち(あの人)は5位なの?」と問い詰められたら、答えに詰まる。ほとんどの人々がシャレと受け止められるランキングだったとしても、順位付けされる当事者にとっては戯言では済まない場合もままあるだろう。
実は、そんなとき頼りになる会社がちゃんとあるのだ。エム・データ(東京・港区)は、365日24時間、東京・大阪・名古屋のテレビをウォッチして、テレビに映ったものを全て記録してデータベース化している。
どのチャンネルのどの番組で、何日の何時何分から何秒間、人物や商品などがどのように映ったのか、その番組はどういう番組だったのか、一緒に映っていたのはなんだったのか――といったデータを、ほぼリアルタイムで蓄積している。このデータを集計すれば、ことテレビに関する限り、誰(何)がどれだけ露出したのかが、たちどころにわかる。
たとえば、11月に大騒動となった「尖閣・中国漁船追跡ビデオ流出」事件。同社に聞けば、「流出翌朝の東京のテレビ局による報道時間の34%を、この事件が占めた」といった回答が即座に返ってくる。
「市川海老蔵事件」でも「ワールドカップサッカー日本チーム大活躍」でも同じこと。これらのデータを積み重ねて、露出の多い順に並べれば、文句のつけようがない正確なランキングが得られるということになる。
会社のデータづくりの仕組みは、100人近い人々が24時間3交代で実際にテレビを見ているというのだ。「もちろん情報の入力や整理の部分は完璧にコンピュータ化されています。でも、ニュースキャスターやコメンテーターの発言のニュアンスとか、番組全体の中でのトピックの位置づけとか、人間じゃないと判別がつかないことがたくさんあるので、人員が必要なのです」(同社)。
同社に入ってくる注文には、たとえばスポーツの試合中継の中で、「特定のスポンサーのロゴが画面の中央付近に何回、合計何秒間映ったかを全部カウントしてくれ」といったものもある。この手のものは、「コンピュータでもできないことはないのですが、人間がやったほうが早くて正確」(同社)なのだという。
やっぱり確かな情報は、「人間がアナログに集める」ほうがいいのか。ちょっとほっとするような、「お疲れサマ」と肩を揉んであげたくなるような、メディアの裏側の話ではある。ともあれ、そういう情報サービス企業の力があって、世の中のランキングが続々とまとめられているというわけなのだ。
(藤井美和)