「人物と思想をセットで覚えてもらいたい、人物に親近感をもってもらいたい」というのがすごくあったんです。

『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』は、21世紀の『ソフィーの世界』だ【原田まりる×坪田信貴(前編)】原田 坪田先生の本に合わせていうと、ニーチェは研究者タイプ、キルケゴールは芸術家タイプ、サルトルは統率者タイプで表現しました。

原田 坪田先生の本に合わせていうと、ニーチェは研究者タイプ、キルケゴールは芸術家タイプ、サルトルは統率者タイプで表現しました。

坪田 なるほど(笑)、それぞれの哲学者にそういう性格的なイメージを持っていたのですね。

原田 結局、誰が何をどういったって、積極的に覚えようとでもしない限り、頭に入ってこないと思うんですよ。だから、「人物と思想をセットで覚えてもらいたい、人物に親近感をもってもらいたい」というのがすごくあったんです。

坪田 哲学者を紹介するときって、思想メインになりがちですけれど、当たり前だけど彼らも人間なんですよね。ニーチェの本を一通り読み終わった後、言っていることはすごいんだけど、本人は前向きなのか後ろ向きなのかつかみづらくて。

原田 言い方が過激すぎるんですよね。一見明るいようにも見えるけど、じつは皮肉も多く含まれていて、斜に構えすぎているところもあったり…。

坪田 言っている内容は、本来はめちゃくちゃポジティブなんだけれど、本当はすごく暗いんじゃないかな、この人…なんて思っていたんです。でも、原田さんの本では、そんなニーチェがすごく人間らしく書かれているのがすごく好きです。ちなみに、一番のお気に入りキャラクターは誰ですか?

原田 お気に入りは…そうですね、ヤスパースかな。自分とは逆のベクトルなんですが、逆だからこそ惹かれるというか…人間的には一番いいなと思いますね。人間関係に関して暖かく誠実な見解の持ち主なので、ヤスパースの本を読むと心が洗われるような気持ちになります。キルケゴールは自分と似ているというか、すごくシンパシーを感じるんですけれど。

坪田 なるほど、キルケゴールと、似ていると(笑)。

原田 ショーペンハウアーにもシンパシーを感じますが、やっぱりキルケゴールのほうが。キルケゴールは芸術家タイプ、ショーペンハウアーは研究者タイプですかね。

坪田 この2人にシンパシーとは…相当どんよりしたものを持っていらっしゃる(笑)。そういえば僕、うちの塾の講師研修で、必ずキルケゴールの話をするんです。

原田 へー!そうなんですか。