この時期、手帳売り場に行くと、毎年おなじみの手帳から、主婦向けに作られたもの、子育て手帳、リフィル式から綴じ手帳、バーチカル式にレフト式、文庫本サイズもあれば、A5判のものまで、本当にさまざまなものが並んでいます。これだけあると、今年は何を選べばいいのか手帳ジプシーになってしまう人もいるのではないでしょうか。そこで、手帳選びが本格化しているこの時期、手帳評論家として数々の著書を持つ舘神龍彦さんに、今年お勧めの手帳を教えていただきました。
手帳選びの本質とは何か?
手帳は「時間軸というOSをインストールしたノート」と考えられます。
これは筆者が数年来提唱している仮説です。それゆえ予定管理やタスク処理、ライフログなどといった時間と関係が強い利用目的と、親和性が高いのです。
そして世の中にあまたある手帳の違いは、このOSの上にある各種利用目的がどれだけプレインストールされているかにつきると考えています。
別の面から見れば、手帳は時間をどうやって表現するかの違いが、製品の違いです。同じ一週間でも、時間軸を縦にして空き時間がわかりやすいようにするのか(バーチカル式)、あるいは時間軸を左ページ半分に横に配置して、大きくメモスペースをとるのか(レフト式)、あるいは1日に1ページを用意するのかで、時間の見え方やメモスペースが変わってきます。
つまり、自分にとって時間のとらえ方とメモスペースの配置はどんなスタイルが理想的かを決めて、それにあったものを選ぶこと。これが手帳選びの本質なのです。
本稿では、上記のような視点からタイプ別に3つの手帳を紹介しましょう。
●バーチカル式の弱点をカバーした「陰山手帳」と、新登場「ライト版」
バーチカル式は、見開き2ページの間に一週間の日付を横に、時間軸を縦に配置する形式です。空き時間が一目瞭然でわかるのがメリットです。反面、メモ欄が小さくなるデメリットがありました。
『陰山手帳 2017』はそれを解決した数少ないバーチカル式の一つです。左ページいっぱいを予定記入欄に利用し、右ページを方眼ベースのメモページにしたレイアウトは、この問題をクリアしています。
また今年からは『陰山手帳2017 ライト版』も登場。こちらは、B6サイズと小ぶりになりましたが、通常版と異なり、見開きいっぱいに予定欄があります。土日の幅が平日と同じになりました。
巻末には通常版でも人気の「1行日記」に加え、「キャッシュフロー管理表」も用意されています。
巻頭には見開きで1カ月の月間ブロック式予定欄(通常版は見開きで2カ月の月間ブロック予定欄)と、最近人気のガントチャートもあります。メモをたくさんとりたいなら通常版、気軽に持ち歩きたいならライト版でしょう。
●レフト式でえらぶなら「和田裕美の営業手帳」
こちらは発売から12年目になった『和田裕美の営業手帳2017』。サイズは最近流行のA5スリム。本体はモレスキンラージよりもややスリム。高さは同じで、A4の書類を三つ折りにすると収納できます。
その特徴は以下の2つに集約されます。すなわち、区切り線と言葉です。
まず前者です。レフト式と呼ばれる週間予定記入欄の時間軸には、午後12時と午後7時にそれぞれ赤い点線が縦に走っています。また、水曜日と木曜日が太い線で区切られ、週の前半と後半をいやがうえにも意識するように作られています。
そして言葉です。レフト式記入欄には毎週の、月間予定欄にも毎月の和田裕美氏の言葉が書かれています。詳しくは実際の手帳を見ていただくとして、どれも動こうとする人の背中を押してくれる言葉です。
さらに、巻末には「営業基本動作」「陽転思考十ヶ条」などがあります。全部で9ページほどですが、これを1年間読みつづければきっと血肉となるでしょう。
●一日一ページ式手帳の新提案「DISCOVER DIARY WALLET」
一日一ページタイプの手帳は、一日あたりのメモスペースが大きくとられています。反面どうしても重く、厚くなりがちでした。1年を2分冊にしたタイプも登場していますが、年前半の冊子を利用している間は、年後半の予定を記入できないというデメリットがありました。今年から登場した『DISCOVER DIARY WALLET2017』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、この問題をうまく解決した手帳です。
手帳は3つの冊子で構成されています。まず月間予定欄の冊子。これは1年分が含まれています。そして1日1ページの冊子が2冊。年の前半と後半です。そして専用のカバーには、月間の冊子と一日の冊子の2つを差し込んで利用します。こうすることで、以下のメリットが生まれます。すなわち手帳全体は軽くなります。
また一年の予定は月間冊子で把握できます。さらに1日1ページ冊子だけでも利用できます。こうすると、月間冊子に書いてある仕事の長期予定は考えなくてもすむわけです。上記の2つの手帳に比べると文言やユニークな記入欄はありませんが、そのぶん、ユーザーの手に使い方がゆだねられているといえます。
このように、今や手帳にはいろいろな選択肢があります。かつては、会社支給の手帳が主流でした。そして現在では、ライフスタイルや好みに応じて好きなものを選べる時代になったのです。自分が手帳に何を求めるのか、まずはそれをじっくり考えましょう。そして自分が好きな手帳を選んで使いましょう。
手帳評論家、ふせん大王。
株式会社アスキー勤務を経てフリー。雑誌新聞に寄稿するほか、文具メーカーのプロモーションもアシスト。製品開発も。最新刊は『ふせんの技100』(エイ出版社)。主な著書に『システム手帳新入門!』(岩波書店)『使える!手帳術』(日本経済新聞出版社)『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)など。
また「マツコの知らない世界」(TBS)「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)などテレビ出演多数。さらに、手帳活用の基本をまとめた歌「手帳音頭」を作詞作曲など、意外と幅広い活動をしている。