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プロのデザイナーでない人でも
クリエイティブツールを使う時代

――アドビのクリエイティブ製品会議「Adobe MAX」現地報告

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第412回】 2016年11月11日
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 アドビのクリエイティブ・クラウドには、イラスト、写真、ビデオ、レイアウト、エクスペリエンス・デザインなどに関連した25以上のツールが含まれている。ユーザーは何を選ぶか、個人かチームかによって、10~70ドルの月額使用料を払う。クリエイティブ・ツールを使いやすくし、民主化に貢献する価格設定と言える。

 また、ほとんどのツールにはモバイル版が開発されており、核心となる機能はモバイルでも同様に利用でき、作業内容がシンクされるのはクラウドの特徴だが、それ以外でもストック写真にすぐさまアクセスして、使用契約をその場で瞬時に結べるといったことや、リアルタイムでコラボレーションができるといったことも、クラウドならではの機能だ。

使い込むほどに
クリエイティブ制作が楽になる

「Project Felix」のデザイン画面 米国アドビのブログ(https://blogs.adobe.com/creativecloud/)から

 今回のAdobe MAXでは、そうしたツールの数々のアップデートが発表された。ここまでできるのか、という驚きのビジュアルツール機能が目白押しだったが、なかでも特筆すべきは、3Dモデルを簡単に制作できる「Project Felix」(プロジェクト・フェリックス)と、「Adobe Sensei」(アドビ・センセイ)というAI機能だろう。

 Project Felixは、3Dの風景やデザインを制作する際に、ストックにある2Dや3Dのアセットを組み合わせ、さらにライトやマテリアルなどを統合できるツール。3Dモデルの作成方法を知らなくても、3Dデザインを完成させることができる。

「Adobe Sensei」の紹介ページ(http://www.adobe.com/sensei.html)にある動画から

 また、Adobe Senseiは、クリエイティブ・クラウドのツールを横断して、機械学習や深層学習の機能を活用するもの。ユーザーの利用から学習を重ねていくこの機能は、クラウドでしか利用できないものだ。

 具体的に何ができるのかの技は、Adobe MAX でもいくつか披露された。たとえば、画像検索では、ユーザーが求める画像を合成して作成しても、それに類した画像をストックから探し出す。あるいは、空に飛ぶ鳥を消して、そこが空白になると、似た雲のパターンを持つ他の空の部分をすぐに特定して、それをペーストするのを可能にする。

 さらに、顔の画像から眉、口、目などを認識することで、それぞれの位置を変えて表情を変化させる、といったことも可能だ。極端に言えば、怒った顔を笑顔に作り直すこともできる。その他にも、繰り返し作業が予測されると、それを自動化するといった効率化でもSenseiが使われている。

 「クラウドは、“1+1が5になる”ようなもの」とラムキン氏は言う。自社がクラウド企業に変貌し、顧客と直に接するようになったことの利点もそうだが、Senseiのように倍々ゲームで知恵をつけていくAIや、クラウドにあるアセットを自在に利用できるようになったユーザーにとってもそうだろう。クラウドの威力は、クリエイティブ世界でも増している。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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