制度の谷間で苦しむ
長期療養や難病の患者たち

 CMLの治療法は、以前は骨髄移植やインターフェロンなどを使用した化学治療が行われてきたが、2000年頃からグリベックという飲み薬が用いられるようになった。副作用も少なく、薬を飲み続ければ、普通の生活を送りながら平均寿命まで生存することも可能になっているという。

 患者たちは「公的医療保険があるおかげで、高い薬も使えてありがたい」という一方で、ほぼ一生涯かかり続ける薬代に大きな不安を抱えている。グリベックの価格は1錠あたり2769円。1日4錠服用するのが一般的なので、1ヵ月の薬代は約33万円。薬局の窓口では、その3割の約10万円を支払わなければならない。あとでお金が戻るとはいえ、これが毎月続くとなると厳しい負担だ。

 この問題を研究している東京大学医科学研究所・特任研究員の児玉有子さんは、「高額療養費があっても、患者の多くは負担の重さに苦しんでいる」と指摘する。

「私たちがCML患者566名を対象に行った調査では、経済的な負担を理由に37.3%の人がグリベックの服用を中断することを考えたと答えています。中断すると急性の白血病に進行する危険性があるのですが、実際に17人が服用を中止した経験があり、現在も2人が服用を諦めています」(児玉さん)

 高額な医療費の負担を少しでも抑えるために、CML患者の中には「3ヵ月処方」という裏ワザを使っている人もいる。

  先述したように、高額療養費は、該当月が年4回あれば上限額が引き下げられ、医療費がどんなに高くても自己負担額は月4万4400円(所得が一般の人)になる。1年間にかかる医療費が同じなら、毎月支払うよりも、まとめて支払ったほうが払い戻し額が多くなり、実質的な自己負担額は少なくてすむ。

 具体的には、毎月、薬を処方してもらうと【4万4400円×12回=約53万円】だが、3ヵ月ごとに処方してもらえば、【4万4400円×4回=約18万円】となり、1年間の自己負担額は約35万円も抑えられる。

 ただし、地域や病院によっては1ヵ月ごとにしか薬の処方をしてもらえないところもある。3ヵ月まとめて薬をだしてもらっても、1回の窓口負担は約30万円になるため資金繰りは決して楽ではない。そのため、生活費や子どもの教育費などを削って薬代を捻出したり、クレジットカードで払える調剤薬局を探してポイントを貯めて生活費のたしにしている人もいるという。