長らく日本のアパレル業界を牽引してきた『ユニクロ』のファーストリテイリングが、2010年9月~11月期の連結決算で大幅な減収減益に陥った。原因は、国内市場において、「秋なし」と言われた長引く猛暑で秋商戦が振るわなかったこと、前年の「ヒートテック」のような大ヒット商品が出なかったとなどだ。ファストリの変調から読み取れることは、アパレル市場において、消費動向に変化の兆しが出始めていることだ。その裏側を覗いてみよう。(取材・文/友清 哲)
息切れを見せたファストファッションの雄
アパレル業界で何が起こっているのか?
「ユニクロ、大幅な減収減益――商品戦略に問題か?」。1月半ば、大手各紙の紙面には、そんな見出しが踊った。
1月13日、カジュアル衣料品店『ユニクロ』を展開するファーストリテイリング(以下、ファストリ)が発表した2010年9月~11月期の連結決算は、売上高が前年同期比4.7%減の約2509億円、最終利益は同34.9%減の約227億円となった。
海外では好調を維持したものの、国内のユニクロ事業が不調で、累計の既存店売上高が12.3%減と落ち込んだことが響いた。例年、最も客足が多いこの期における減収減益は、02年以来8年ぶりとなる。既存店売上高は、年末商戦に期待がかかった12月も、前年同月比15%減となった。
変調の主因は、長引く猛暑のために予想していたよりも秋物商戦が盛り上がらなかったこと、昨年は「ヒートテック」のような大ヒット商品が出ず、客足が減った反動で売り上げや利益が目減りしたことなどだ。一部の秋物商品で値引き販売を行なったことも、利益を押し下げる要因となったようだ。
ファストリの経営陣は、「主力のフリースなどのデザインを増やしたが、特定商品に人気が偏り、在庫が膨らんだ」(毎日新聞、2011年1月14日付け)と、商品戦略に関わる見通しの甘さを語る。
2011年8月期通期については、もともと対前年比で減益を見込んでいた最終利益の予想は据え置いたものの、売上高の予想を当初より100億円少ない約8460億円に下方修正した。今後は商品戦略の見直しにより、巻き返しに取り組む方針だ。再び勢いを取り戻すには、長期戦を覚悟しているという。