電通過労自殺事件で強制捜査が入ったいま、中小企業も大企業もお役所も「残業ゼロ」に無関心ではいられない。
小池都知事が「夜8時には完全退庁を目指す」、日本電産の永守社長が「2020年までに社員の残業をゼロにする」など、行政も企業も「残業ゼロ」への動きが急加速中!
株式会社武蔵野は、数十年前、「超ブラック企業」だった。それが日本で初めて日本経営品質賞を2度受賞後、残業改革で「超ホワイト企業」に変身した。
たった2年強で平均残業時間「56.9%減」、1.5億円もの人件費を削減しながら「過去最高益」を更新。しかも、2015年度新卒採用の25人は、いまだ誰も辞めていない。
人を大切にしながら、社員の生産性を劇的に上げ、残業を一気に減らし、過去最高益を更新。なぜ、そんな魔法のようなことが可能なのか?
『残業ゼロがすべてを解決する』の著者・小山昇社長に、人材育成のヒントを語ってもらおう(2016年12月27日時の内容)。

毎年135%成長の会社にある日突然!

労基署に<br />目をつけられた<br />社長の運命小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/

 株式会社ホームライフ(京都府/住宅建設)は、戸建住宅の企画、デザイン、設計、施工をする会社です。

 創業してから11年間(2005年創業、手崎孝道社長が創業者)、毎年平均135%の成長を続けています。

 地域に密着する右肩上がりの会社ですが、その急成長が仇となって、手崎社長は思わぬ事態に見舞われます。

「あるとき、私の会社に、作業服を着てリュックを背負った若い女の子がやってきました。
 何の用件かうかがってみると、彼女はこう言ったんです。『労働基準監督署からきました』と。びっくりしました。通告があったわけではなくて、目ぼしい会社、目立つ会社、成長している会社の現状を調べているようでした。『タイムカードを預かっていいですか?』
 と聞かれ、ダメとは言えません。預けることになったのですが……」(手崎社長)

 後日、ホームライフを再訪問した労基署の女性は、「残業代を出されていますか?」と手崎社長に詰め寄った。

 このことをきっかけに、ホームライフの早帰りの取り組みが本格化します。

「建築業界は、ブラックではなくても、グレーな部分があります。大手のハウスメーカーでもかなり遅くまで仕事をして、残業が当たり前の業界です。私の心の中に、『地方の小さい建築会社は、遅くまでがんばるしかない』という意識があり、『遅くまでがんばるのはいい社員』だと誤解していました。でも現在では、考え方を改めました。定額残業代(毎月定額の残業代を支給する制度)を導入し、それと同時に、社員の残業時間を減らすための取り組みを始めました」(手崎社長)

 手崎社長にとって、「建築業界は、残業があるのが当たり前」「建築業界は、残業代がなくても当たり前」という業界の常識が風景になっていました。

 しかし、労基署がきて、間違いに気づいた。手崎社長は、「今までと違ったやり方」を取り入れることにした。

 手崎社長は、社員の出勤退勤を管理するため、クラウド型の勤怠管理システムキングオブタイム www.kingtime.jp)を導入しています。

「今までは、一度会社に出勤してから現場に行かせていました。仕事が終われば、どんなに現場が遠くても会社に戻り、タイムカードを押させていた。でも、キングオブタイムの導入によって直行直帰が管理でき、社員のムダな行動がなくなり、時間効率が向上しています。また、このシステムは場所を表示できるので、虚偽報告が減ります。社員にとっても、帰る時間が早くなるので評判はいいですね」(手崎社長)