災害による想定外の被害、小さな確認を怠ったために起こる重大事故、コンプライアンス上の些細なミスが引き起こした巨額の訴訟など、企業にとっていつ何が起こるか予想できない今、組織のトップやマネジャーは従業員の「危険行動」を「安全行動」に変える仕組みづくりができなければならない。米国で導入され、 大きな成果を上げているBBS(組織行動セーフティマネジメント)を日本にはじめて紹介した石田淳氏に、スローガンや心構えを説くのではなく、行動にフォーカスするBBS理論について聞いた。(インタビュアー:中村富美枝)
──石田さんは、企業はじめ、あらゆる組織に新しい安全管理の概念(BBS)が必須だと訴えておられますね。そもそもBBSとは、どういうものだと考えればいいのでしょう。
石田 BBSとはBehavior Based Safetyの略で、私どもは組織行動セーフティマネジメントと呼んでいます。これまでの危機管理とは違って、危険の芽を従業員一人ひとりの些細な行動の中に発見し、安全行動に変えていく具体的手法のことです。
どんな職種であれ、どんな組織体であれ、売り上げを立てることと同じくらいに、事故を起こさないシステムづくりが重要なんです。でも、必ず起こるとは限らない事故に関しては、なかなか時間もお金も使おうとしない企業が多い。そして、やがて取り返しがつかないような大事故によって、財産も信用も大きく損なうことになります。
──そこには、天災に対する備えのようなことも含まれますか?
石田 もちろんです。今回の東日本大震災は、本当に痛ましい限りです。津波の規模も原子力発電所で起きていることも、まさに「想定外」だったのでしょう。被災地への交通経路やガソリンの確保などを見ても、行政の災害時の仕組みづくりが甘かったと言わざるをえません。
しかし、危機管理においては、想定外という言葉が存在してはならないのです。あらゆることを想定して備えなければならない。これは、国レベルの問題だけでなく、一企業、一個人でも同様です。