電子書籍と紙の書籍は共存共栄ではないでしょうか。むしろ、どれだけ「読む」という行為を普及できるかが、両者にとって問われているわけです。そこから先は電子媒体で読むか、紙で読むかは読者の好みやコンテンツの種類で分かれていけばいいのです。

「読書」というのが趣味の世界になってしまったら勿体ないと思います。一部のマニアがやるものではなく、どんな人でも「読書」という行為が生活の一部になってほしい。だから「読む」という行為を広めるのは電子であろうと、紙の本であろうと、すべてに関わる人が一緒になって担っていかないといけない。

――書店で本を選ぶと、読む範囲も広がるような気がします。

昼間 どこも小売店は厳しい状況に置かれていますが、書店という売り場はその中で特異な面が多いと思います。まず、これだけ買わない人でも来店する小売店ってないんじゃないでしょうか。しかも客層も老若男女、実に多様な人たちが自由に出入りする場所なんです。

リブロ池袋本店 昼間匠さん(後編)<br /> 書店は「読者に届ける最後の場」!<br /> 一人でも多くのお客さまに届けるためにリブロ池袋本店、ビジネス書売り場の新刊台。今をときめく書籍が所狭しと並ぶ。

 さらに、そこには元気な人もいれば、悩みを抱えた人もいる。基本的に買物って楽しい行為だから、それだけの余裕のある人がしますが、書店にはそういう人だけでなく、切羽詰まった状況の人も来ると思います。遺産相続で悩んでいる人も、離婚を抱えた人も、それこそDVに直面している人もいます。100人いれば100人のドラマがある。それが書店だと思うのです。それだけチャンスが多いということです。こういう多様な人が必要としてくれる場ですから。

 そんな書店は、やはり来てくれたお客さんに「なんかある」と思わせたいですね。

――そうですね、ありがとうございました。

 

 学生時代は、イタリアに留学したいと思っていた昼間さんは、たまたま書店員となったが「これが思いのほか水が合って」と言う。月に15冊は読むという読書家の自宅は、本が散乱しているとか。こんな書店員さんの期待に応えられる本をつくらねばと再認識しました。

 次回は、紀伊國屋書店新宿本店、水上紗央里さんにご登場いただきます。