計算にまつわる興味深いエピソード
この本には、ミルナーの最初の論文にモレゾーンさんに計算をさせたエピソードが書かれています。
数を繰り返して言うテスト(digit span test)がありますが、それをさせています(1955年、手術後2年)。
すると、ちゃんとできたのです!
<例>5,8,4.
これを、繰り返して「5,8,4,5,8,4」と言えるかどうか。
20分間別のことをして、何を繰り返したかを尋ねても答えられない場合は、忘れてしまっています。
また、よく答えられることがあった場合に、
「よくできましたネ、どうしてできたの?」
と聞いたところ、
「5,8,4を足すと17になり、2つに分けると9と8になる。8を覚えて答えたのです」
と答えました。
そこで、ミルナーが、
「私の名前を知っていますか?」
と聞くと、モレゾーンさんは、
「いいえ。すみません。私は記憶に問題があるのです」と。
ミルナーが「私はミルナー博士で、モントリオールからきました」と言うと、モレゾーンさんは「モントリオール、カナダですね」と答えました。
ミルナーが、
「ところで、数をまだ覚えていますか?」
と聞くと、モレゾーンは、
「数? 数って何ですか」と。
数のことや、自分が正しく答えようとしたことは、すべて忘れてしまっているのでした。
最近、モレゾーンさんの執刀医のスコビル博士の孫のルーク・ディトリック(Luke Dittrich)が脳手術をした医師から見たモレゾーン像を書いた『PATIENT H.M.』を出版しています(2016年8月刊)。
この本にもモレゾーンさんの計算話が紹介されていますが、コーキンの本には書かれてないものもあるので、併せて読まれることをお勧めします。
京都大学名誉教授、医学博士。世界で最も権威がある脳の学会「米国神経科学会」で行った研究発表は、日本人最多の100点以上にのぼり、現代日本において「脳、特に前頭前野の構造・機能」研究の権威。2011年、瑞宝中綬章受章。1932年、大阪生まれ。著書に、『1歳からみるみる頭がよくなる51の方法』『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』『あなたの脳が9割変わる! 超「朝活」法』 (以上、ダイヤモンド社)、『新版 赤ちゃんの脳を育む本』『2~3才からの脳を育む本』(以上、主婦の友社)、『天才脳をつくる0歳教育』『天才脳を育てる1歳教育』『天才脳を伸ばす2歳教育』『天才脳をきたえる3・4・5歳教育』(以上、大和書房)などベスト&ロングセラー多数
1932年、大阪生まれ。脳科学の権威である京都大学名誉教授・久保田競氏の妻で2人の息子の母。約30年前に、日本における伝統的な母子相伝の育児法を見直しながら、自身がアメリカ在住時と日本で実践してきた出産・育児経験をもとに、夫・競氏の脳科学理論に裏づけされた“0歳から働きかける”久保田式育児法〈クボタメソッド〉を確立。この20年で3000人以上の赤ちゃんの脳を活性化させてきた。テレビなどで「脳科学おばあちゃん」として有名。累計38万部突破のシリーズ『0歳からみるみる賢くなる55の心得』『1歳からみるみる頭がよくなる51の方法』『カヨ子ばあちゃん73の言葉』『カヨ子ばあちゃんの男の子の育て方』『カヨ子ばあちゃんのうちの子さえ賢ければいいんです。』『赤ちゃん教育──頭のいい子は歩くまでに決まる』『カヨ子ばあちゃんの子育て日めくり』(以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。ズバッとした物言いのなかに、温かく頼りがいのあるアドバイスが好評
【脳研工房HP】 http://www.umanma.co.jp/