また、この変化の中で、一際目立つのは「地理情報」を使ったキュレーションのあり方だ。

 たとえば “Color”(http://www.color.com/)というサービス。正式スタート前に数十億という巨額を集めるのに成功した、話題のベンチャーだ。GPSを使って「45m以内の人々」のためにリアルタイムで写真を共有していく。たとえば、結婚式の会場で、撮影した写真が次々とアップロードされ、参加するすべての人に瞬時に情報が行き渡る。それは、現実の場のあり方さえ変えてしまう。写真を共有する地理的範囲を限定する事で、選別された情報だけがリアルタイムに伝わるのだ。

 近年のベンチャーブームの再興の中、地理情報を活用して、仮想空間と現実を統合するムーブメントは急速に加速している。

「社会を変えるソフトウェア」
ウィキリークスとウシャヒディが持つ可能性

 では、前回の記事で触れた「sinsai.info」そしてその母体となった「ウシャヒディ」は、どう解釈することができるのだろう。ここでもう一つのキーワードが登場する。「社会を変えるソフトウェア」 (注)だ。

 実はあるオンラインメディアで「社会を変えるソフトウェア」の特集が組まれ、前回の記事で特集した「ウシャヒディ」と世界を騒がせた「ウィキリークス」が並び、上位を独占したのだ。

ソーシャルメディアコンサルタントのDarren Sharpが作成した、「社会を変えるソフトウェア」ランキングの一部。ウィキリークスがランキングの1位に、そして、ウシャヒディが2位にあげれらた。

 ウィキリークスが世界を騒がせたのは記憶に新しい。行政の透明性に対する根本的な疑問を投げかけ、社会の新たなムーブメントを引き起こした。

 この2つのムーブメントには共通点がある。「オープンであるはずの情報」を活用して、新しい社会を作りたいという強い意志だ。その意志に従い、「ユーザーが情報を集め、選別し、発信する」という前提に立って、新しいプラットフォームを用意した。彼らがやったことはそれだけとも言える。にもかかわらず、この2つのソフトウェアは耳目を集め、加速度的に影響力を増していった。

(注)「社会を変えるソフトウェア」はGov.2.0を訳したものだ。オープンガバメントや電子政府の実現への新しい試み、広くは、ソフトウェアを活用した市民による問題解決を含む。社会的にあまり認知されていないキーワードなので、本文ではあえて意訳を試みている。