進展する市民へのパワーシフト
新たな情報技術は「当事者が中心となる復興」を後押しするのか

 前回「sinsai.info」を題材にとって述べたように、オープンソースというムーブメントは、震災というとてつもない社会の課題と出会い、新たな進化を遂げようとしている。エンジニアたちを魅了したのは「オープンソースのソフトウェアを災害のために使う」という発想だった。

 チュニジアのジャスミン革命、エジプトの政権交代、リビアの内戦。それぞれの場所でソーシャルメディアが活躍しているように、社会のあり方はこれら新たな技術の普及とともに大きく変わろうとしている。

 このようなムーブメントは個々ではわずかな力しかもたない市民へのパワーシフトを更に推し進める。「sinsai.info」が示したのは、市民の自発的な行動が災害支援のあり方を変えてしまう、そんな可能性だったのだ。それは、次回以降で紹介する「寄付市場」においても同様だ。

 そしてこのムーブメントは、震災後の復興という文脈の中でも大きな論点になるだろう。震災から1ヵ月、議論がやや落ち着きを取り戻しつつある今、「当事者を中心とした復興のあり方」を考える時期がきている。

 次回以降2回にわたって、寄付市場に起きた「地殻変動」に触れ、そこに持ち込まれたイノベーションと、当事者を中心とした寄付のあり方を探っていこう。一時的なものであれ、かつてないほどに寄付市場が膨張を見せている今、新たなイノベーションは生まれうるのだろうか。