堀江 ジャスト・ギビングは、もともとイギリスで始まったプロジェクトで、たとえば「ロンドンマラソンを完走するから、賛同して寄付してくれ」とかいって、みんながそのチャレンジを応援する仕組み。

岡田 それは、完全に評価経済ですね。

ネットワーク社会では隠し事は不可能
もうすぐ匿名の通じない世の中になる

――リツイートして情報を共有したり、寄付を集めたり、どちらもソーシャルメディアを使っていますよね。評価経済とソーシャルメディアっていうのは一体のものなんですか?

岡田 一体です。実は、評価経済社会自体は、古代の中国にも日本にもあったんです。三国志の時代には、中央で職に就こうとしたら、地方で徳を磨いて評価を集めなければならなかったし、日本でも戦国時代までは、家名とか武名が重要視されていました。でも織田信長が能力によって人を使い出しましたよね。百姓でも誰でもいいから、武功さえあげたら出世させる貨幣経済社会になった。それはなぜかというと、評価は通貨のように流れないから。「俺は地方ではちょっとしたもんだぞ」って言っても、中央ではその評価が流通していない。でもネットワーク社会の中では、どっかでいいことをしたポイントがよそで使えるし、悪いことしたポイントがマイナスになる。ソーシャルネットワーク社会っていうのは、ほんとに隠し事のできない社会なんです。

――織田信長以来、何百年ぶりにシステムが変わった?

岡田 今はまだ、僕や堀江さんのあらゆる発言が数秒のうちに世界中に流れる状態ではありません。日本語だし、まだネットワーク社会が完全ではないですから。これが自動翻訳されたりすると、どこにいてもパブリックな存在になっちゃう。

堀江 そのとおり。僕はその未来を見越して、準備してますよ。だから小学校1年生のときにうんこを漏らした話とかもちゃんと言ってます。僕、すごい本気ですよ(笑)。そういうのはあらかじめ言っておかないと、付き合ってる女の子とかにいきなり「あそこにああいうふうに書いてあるけどほんと?」って、いつか絶対バレると思うんです。だから、心の準備とディスクロージャーはかなり進めてますよ。

岡田 これはもう程度問題。3年後か5年後か10年後か、あとはたまたまバレないってことがあるだけ。ウェスティンとか、一流のホテルに泊まっても従業員がツイッターでつぶやいちゃう。それは従業員教育が悪いのかっていうと、そんな教育なんてできないんです。

堀江 チュニジアから始まった、北アフリカで起きているソーシャルネットワーク革命もそう。チュニジアって、風光明媚で格差もない先進的な社会といわれていて、国民もそう思っていた。でもインターネットで他の国の事情を聞くと、ぜんぜん違うってことがわかって、それが口コミで広がっちゃう。俺たちはだまされていた! なんでこんなに収入が低くて抑圧されているんだ! って。