産業医は、医学的な立場から
会社との調整をしてくれる専門家

 産業医は、主治医からの情報や、患者さんの状態について情報を受け取った上で、「定期的な通院が必要か」「治療による機能障害があるかどうか」「抗がん剤や放射線治療による体力消耗があるか」「精神面でのケアは必要か」などを把握します。

 そして、その内容を、医療の専門家の立場から会社に伝え、「体力を消耗しているので、有給休暇を使って最初は時短勤務から始める」「手術によって重い荷物を持てなくなったので、事務職に変更する」など、人事部のスタッフなどと患者さんの復職プログラムを考えます。
 そして、様子をみながら、無理なく働けるかどうかを定期的に面談してフォローアップをします。
 ただ、産業医はあくまで就業に差し支えないかを判断するための専門家で、がん診療そのものの専門医ではありません。患者さんが自分の状態を正確に説明しないと、過度な配慮によって、希望しない配置転換を受けることもあります。
 産業医との面談の際には、「自分ができること、できないこと」「配慮してほしいこと」ということをしっかり伝えて、「自分はこのように働きたい」という希望を明確にしておきましょう。

 また、すべての会社に産業医が選任されているわけではありません。従業員が50人未満の小規模な会社は産業医の選任は努力義務にとどまるので産業医の力を借りられない場合も多いと思われます。
 その場合は上司や人事担当者に相談にのってもらい、復職プログラムを作って、仕事を続ける道を探ってください。一般的には、療養する以前から良好な人間関係を築けている場合は、職場復帰もしやすい傾向にあるようです。

 労働基準法は、病気のみを理由に従業員を解雇することを禁止していますが、休職が多い場合には、それは解雇理由の一つにもなりえます。本人には働く意思があるのに、退職を勧められた場合は、まずは会社の人とよく話し合いましょう。
 がんであることだけを理由に退職を強要されたり、いやがらせを受けたりした場合は、がん相談支援センターの担当者や最寄りの労働基準監督署、弁護士などに相談しましょう。

 産業医は、医療の専門職の立場から、職場における労働者の健康管理を行う医師のこと。復帰のサポートなども担う。