今年の大学入試では、携帯電話を使っての不正が話題になったが、精神論で受験生のモラル向上を訴えるよりも、不正ができないようなシステムを構築することが大切だ。ここでもBBS(組織行動セーフティマネジメント)の考え方が役に立つ。行動科学の第一人者、石田淳氏に聞く。(インタビュアー:中村富美枝)
──大学入試で、携帯電話を使った受験生による不正が行われました。やはり、大学組織にもBBSの概念は必要でしょうか?
石田 そのとおりです。今回の事件について、論説委員や有識者が新聞に寄せているコメントを読んで驚きました。その多くが「教育現場のモラルを徹底せよ」というような論を展開しています。
もちろん、モラル向上を図る必要はあります。しかし、そんな不確実なことを言っていて、来年の入試はどうするのですか? まず着手すべきは、不正ができないシステムをつくることです。
──強制的に電波が圏外になる装置をつける方向で検討されているようですね。
石田 お隣の韓国では、すでに携帯探知機を用いたシステムが構築されています。日本の大学が、そうしたことをやらずにきたことが怠慢なのです。受験を控えて必死の大学生にモラルを求める前に、違反をさせないような仕組みをつくっておくべきです。
──それは、教育現場の人からすると、一種の敗北なのかもしれません。
石田 私は、正しい行動がとれるようになれば、自然と意識もついてくると思っています。先に意識だけを求めるからおかしくなるのです。まず、いやでも正しい行動をとるように導いてあげる。そして、正しい行動にいい結果がついてくるということをわからせてあげれば、人は自然と高いモラルを持てるようになるのではないでしょうか。