いつからでも脳は鍛えられる

 私が記憶力競技を目標にしてトレーニングをがんばってこられたのには、「ある理由」があります。

 昔は、一般的に年齢を重ねると脳の力は衰えていく一方だと考えられていました。ましてや、脳を使う記憶力などは当然下がっていくものだというのが常識でした。

 しかし近年の研究により、そうではないことがわかってきたのです。

 年をとっても、脳を使うことによって新しい神経回路を増やせることが明らかになりました。神経回路が増やせるということは、脳が衰えるどころか、能力アップができるということです。

 冒頭で「ある理由」と言いましたが、その理由がこれだったのです。

「脳はいつからでも鍛えることができる」

 このことを本気で信じていました。

 もしそうでなければ、はじめから10代や20代の選手たちと競おうなどとは思いもしなかったでしょう。

 そして、実際に40代半ばで、若者たちと記憶力を競って優勝したことで、それが実証されたと自分では思っています。

 勘違いされると困るのでここで断っておきますが、私は元から記憶力がよかったわけではありません。

 たぶん、今でも皆さんと脳自体の基本性能は同じです。

 別に謙遜しているわけではなく本心です。それにこれは間違いなく真実です。

 仮に今、トランプの「神経衰弱」をしたら、普通に負けることもあるでしょう。

 私が記憶力日本一になれたのは、脳の仕組みを利用した、記憶力や集中力が増すテクニックを使ったからにすぎないのです。

 記憶力を上げるのに必要なのは、もともとの「脳の性能」ではなく「技術」なのです。

 本書では、私が記憶力日本一になるために使った、記憶力や集中力を鍛える方法、さらには目標達成のための方法など、皆さんの勉強にも応用可能なものをたくさん紹介しています。

 ちょっと出しすぎかなと思ったほどです。出し惜しみはしていません。

 なぜならチャレンジを経て人生の次のステージに上がった今の自分のミッションが、「記憶」というもので世の中の役に立つということに変わったからです。

 本書で紹介した方法を使えば、私がそうであったように、皆さんもそれぞれの勉強や仕事において必ず素晴らしい成果を上げることができます。