将来のバラツキの度合いで、要求収益率は変わる

 現在価値を将来価値に換算するときに、使う利率は、要求収益率といいました。

 一方、将来価値を現在価値に換算するときに使う利率を、割引率といいました。要求収益率と割引率は表裏一体で同じものです。

 現時点からすれば、将来のキャッシュフローはバラツキがあります。つまり、リスクがあるわけです。このバラツキの程度を割引率に反映させることになります。

 ここは大切なところなので、順を追ってご説明しましょう。

 あなたが親友に100万円貸すとしたら、何パーセントの利息がほしいですか? 親友だからいらないと言わず、ここは甘やかさずに取ってください。

 それでは、知り合いに貸すとしたらどうでしょう? 

 あなたは、知り合いに貸す利率を親友のそれよりも高くしたはずです。なぜでしょうか。

 それは、親友と知り合いとでは、貸したお金が返ってくる、返ってこないの「バラツキ」が違うからでしょう。

 実は、ここにファイナンスの重要な「ハイリスク・ハイリターンの原則」があるわけです。リスクが高いものに投資する(=貸す)からには、高いリターンを要求すべきということです。これって、あたりまえのことです。

 つまり、リスクが高ければ高いほど、要求収益率(=割引率)は高くなり、リスクが低ければ低いほど、要求収益率(=割引率)は低くなるのです。

 こうして、リスクの程度を割引率に反映させることになります。

 リスクがあるということは、バラツキがあるということです。1年後に100万円を確実に受け取れる場合と、受け取れるか受け取れないかがわからない場合では、現在価値に違いがあるというのは、感覚的にもお分かりいただけるでしょう。

 リスクがある場合は、ハイリスク・ハイリターンの原則から要求する収益率、すなわち割引率が高くなることから、現在価値に割り引くとその価値の減少幅が大きくなるわけです。

 こうした考え方を、投資判断や企業価値評価につなげていくのです。

石野雄一(いしの・ゆういち)
株式会社オントラック 代表取締役社長
ビジネス・ブレークスルー大学 非常勤講師
1991年3月上智大学理工学部卒業後、旧三菱銀行に入行し、9年間勤務した後退職。
2002年5月米国インディアナ大学ケリースクール・オブ・ビジネス(MBA課程)修了。帰国後、日産自動車株式会社入社。財務部にてキャッシュマネジメント、リスクマネジメント業務を担当。2007年2月より旧ブーズ・アレン・ハミルトンにて企業戦略立案、実行支援等に携わる。2009年5月同社を退職後、コンサルティング会社である株式会社オントラックを設立、現在に至る。企業の投資判断基準、撤退ルールの策定支援コンサルティング、財務モデリングの構築、トレーニングを実施している。
著書に『道具としてのファイナンス』(日本実業出版社)、『ざっくり分かるファイナンス』(光文社新書)がある。著者の会社が運営するサイト「ファイナンス用語辞典」をご活用ください。URL: http://ontrack.co.jp/finance-dictionary/

※連載は、今回で終了します。