少しずつ広まりつつある「ノマドワーキング」が、企業のサマータイム導入でにわかに注目を集めている。働く場所を選ばない新しい働き方とは、 一体どんな効果があるのだろうか? 『「どこでもオフィス」仕事術』著者の中谷健一氏による集中連載です!
話題のノマドワーキングはどこまで有効か?
「これから客先に出かけて、そのままノマドしてきます!」
「今日はそろそろノマドタイム!」
この夏、首都圏のオフィスではそんな会話が頻繁に聞かれるかもしれません。電力不足対策として、政府は企業に一律15%の節電を呼びかけていますが、これを受け、自主的なサマータイム導入や残業禁止、定時空調オフを予定しているオフィスが多いようです。
「仕事の量は減らせないのに、5時にエアコンが強制オフですよ。それで節電はできるかもしれませんが、熱中症で倒れる人が続出するのではないでしょうか? 本当にどうなるものやら……」
最近、そんな声が耳に入ってきます。みなさん、日々暑くなる気温を肌で感じながら、この夏の節電対策に不安を感じているようです。
そうした心配の解決策のひとつが「ノマドワーキング」です。
「ノマドワーキング」とはオフィスの外にノートパソコンなどを持ち出し、喫茶店やファミレス、電車やバスの中で仕事するワークスタイルのこと。仕事の内容に合わせて、働く場所を自由に選択する移動型の働き方です。
「遊牧民」を意味する「ノマド」という名を冠しているのは、もともとはITを使いこなすフリーランサーが情報端末を武器にして都市の中を旅するように仕事することを指していたためです。
ジャーナリストの佐々木俊尚さんが、2009年に著書『仕事するのにオフィスはいらない──ノマドワーキングのすすめ』の中で、このワークスタイルを紹介すると、一般のビジネスパーソンの間でも一気に広がりました。
面白いことに、最近ではフリーランサーに限らず、オフィスの外でPCを使って仕事や課題をこなす作業スタイル自体を、広く「ノマド」と呼ぶようになっています。
タブレットPCやスマートフォンの普及、公衆無線LANやWiMaxなどの無線通信環境の拡充を背景に、サラリーマンや学生さん、主婦も気軽に「ノマド」しています。
街中のカフェでは、仕事バリバリの営業系男性やITクリエーター系ビジネスパーソンに混じって、おしゃれなOL風女性や、70代とおぼしき白髪の紳士までもがパソコンやタブレットPCを取り出している光景を目にするようになりました。