自分の腸内細菌に合う食事が、最高の食事である

―― そういう話を聞くと自分にベストな食生活をどのようにして見つけたらいいのか、と考えてしまいます。

スペクター それは実験的に調べていくしかありません。あなたが体内に持っている微生物が何を栄養にしたいか、誰も正確に言うことはできません。自分で発見していかなければなりません。将来自分の個別の好みが何であるかを調べるために、いろいろな食事を試してその前後で微生物を調べるしかありません。一般的に何が微生物にいいかを言うことはできます。野菜系の食事が多い人は、変化に富んだ食生活をすることで、発酵食品を食べる人と同じように、健康です。

―― 肉を少なめに食べるのはいかがでしょうか。

スペクター 肉を減らすことはないと思いますが、それは多くの高繊維質の、いろいろな種類の野菜を食べているという前提です。定期的に発酵食品を食べているという前提です。日本の場合、味噌汁とか納豆などです。ヨーグルトもいい。キムチとか、ケフィアのような発酵ミルクもいい。ケフィアはコーカサス地方の伝統食品で、ヨーグルトに味も形も似ていますが、乳酸菌に加えて酵母が入っているのが特徴です。こういうものが体にいいことが今よくわかります。

 日本人の食生活にとって特に重要なことは西洋の食事にどうしても誘惑されがちですが、日本食のいいところを維持しつづけることです。その上で西洋の食事のいい部分を採り入れることです。とにかく日本人が持つ、腸内微生物にいいところは失わないでほしい。

―― スペクター博士は、ご自身にとってベストな食生活を発見することはできましたか?

スペクター まだ完成しておりませんが、今がんばって探しているところです。特に旅行に出たときに、できるだけいろいろな種類の食事を取ろうと心がけています。毎週何か新しい食事をして試しています。メモを取り、実験しています。日本食も試しています。朝食では納豆を食べています。最初は嫌いでしたが、段々好きになりました。朝食で自分の好きなヨーグルトと一緒に味噌汁をとり、キュウリや他の野菜の漬け物も食べています。自分の腸内微生物にとってベストな食事を見つけるために常に新しい食べ物を試しています。私の庭はまるで熱帯植物の庭です。いろいろな植物を育てています。いろいろな種類のものを食べることが、より健康的な人生につながります。これは誰もが自分でできることです。

―― 自分の体を使っての人体実験ですね。

スペクター そうです。昔は毎日同じサラダを食べていれば健康になれるという考えがありました。アボカドとエビサラダを食べていればいい、という考えでした。今でも多くの人がこれを実践しています。でもそれを実践すると微生物の種類が少ないので、結局健康ではなくなることがわかりました。ですから、私はみんなに食べ物に関してもっと冒険心を持つように奨励しています。いろいろな食事をすることです。

―― 最後の章に「我々の生活や人生は、自分にベストに作用するものを選ぶための発見の旅になりうる」と書かれていますね。

スペクター その通りです。100%そう信じています。微生物をテストすることは、近いうちにルーティンになると思います。あなたの医者も、あなたの微生物を定期的にテストすることができるでしょう。血液検査と同じようになるでしょう。微生物が出している化学物質か微生物の種類を簡単に調べることができるようになるでしょう。そして母親が自分の赤ちゃんの腸内微生物を調べてもらったり、自分の微生物を調べてもらったりできます。何が欠けているか、逆に食事の多様性を維持するためにはさらに何を自分の食事に加えたらいいか、を知ることができるようになるのです

(本連載は、全3回予定です。後編につづく。)