建物が揺れ始めると、半数以上の参加者がパニックに陥り、先を争うようにビルから逃げ出してしまいました。建物に残ったのは、私を含む何人かの参加者だけ。もしビルが崩壊していたら、パニックに陥ってビルから離れた人が助かり、冷静に様子を見ていた人が被害に遭うという皮肉な状況になっていたかもしれません。

 この構図は、津波による被害でも見られたかもしれません。

 地震後、津波の襲来を予測してパニックに陥り、取るものもとりあえず逃げたことが幸いした例。また地震の影響を楽観的に考えて行動していた人が被害に遭われた例もあったのではないでしょうか。

 パニックは、起こらないほうがいいのは確かです。しかし、予想外の事態に急に遭遇するとパニックに陥るのは仕方がないことです。

 もちろん、無用なパニックを引き起こすのは論外です。パニックを防ぐという理由で国民にとって必要な情報を隠蔽するというリーダーシップを、認めることはできないということを強調したいのです。

 特に悪い真実を知ることは誰にとっても辛いことです。それによって動揺することは十分にありえます。しかし、その事実に向き合っていかなければいけないのも現実です。さらに事実を受け止め、より良い解決策を見つけ出すことが国民の手に委ねているほうが健全ではないでしょうか。

国民の側が強いリーダーシップを待望しているのか
自ら考え行動する意思を持つべきだ

 5月のはじめ、NHKの討論番組に出演しました。そのときのテーマの一つが「いま総理大臣に強いリーダーシップは必要か」というものでした。

 総理大臣や政権に必要な資質として、常にリーダーシップが問題になります。確かに現在のような混乱した状況では、強いリーダーシップが求められるかもしれません。しかし、発揮されたリーダーシップが間違っていては目も当てられません。