「うまくいかない!」と思ったら……

久賀谷 亮(くがや・あきら)
医師(日・米医師免許)/医学博士(PhD/MD)。イェール大学医学部精神神経科卒業。日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間にわたり従事する。現在、ロサンゼルスにて「TransHope Medical」院長として、マインドフルネス認知療法やTMS磁気治療など、最先端の治療を取り入れた診療を展開中。臨床医として日米で25年以上のキャリアを持つ。趣味はトライアスロン。著書に『世界のエリートがやっている最高の休息法』『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』(ダイヤモンド社)がある。

前回と今回の内容に、マインドフルネスの本質はほとんどすべて含まれています。あまりにもシンプルで拍子抜けしたという人もいるかもしれませんが、マインドフルネス呼吸法にマインドフルネスの全エッセンスは尽くされていると言ってもいいくらいです。

他方、なかなかそうもいかない面があることもよくわかっています。
前著『世界のエリートがやっている最高の休息法』の刊行後、日本に帰国した際に、さまざまなメディアから取材をしていただきました。そのときにとても印象的だったのは、多くの記者さんがこういう質問をしてこられたことです。

「このやり方で合っているんでしょうか?」
「1日何分やればいいですか?」
「やっぱり半年は続けないとダメですか?」

この先にも何度か繰り返しますが、マインドフルネスには「こうでなければならない」というルールがほとんどありません。とにかく徹底的にプラグマティック(実用重視)になりましょう。
身体の感覚や呼吸に意識を向けるという点以外は、どれだけでも自分なりにアレンジしていただいてかまいません。

たとえば、イスが苦手であれば正座でもいいですし、坐禅に慣れている人は、あぐらをかいて床に座ってもけっこうです。就寝前に横たわってやるのもいいでしょう。

イスに深い意味があるわけではありません。あぐらや正座だと脚がしびれてしまうことがありますし、寝転びながらだと眠ってしまうことがあります。また、ソファなどに深く沈み込んだ姿勢だと、自然に呼吸できないかもしれません。だとすると、イスに座るのがいちばん合理的ではないか─その程度のことだと考えてください。

マインドフルネスの核心は“Let it go.”──あるがままです。「○○でなければならない」「××してはならない」というように、一方的に決めつける態度をジャッジメンタル(Judgemental)と言いますが、この休息法はそうしたジャッジを嫌います。

ノンジャッジメンタルの大切さは前著でもかなり強調したつもりでしたが、それでも「正しいやり方」とか「続けるべき時間」といった質問をする記者の方が多かったのがとても印象的でした。
もちろん、彼らを責めているわけではありません。問題は、私たちがいかに「ジャッジメンタルの呪縛」にとらわれているかということなのです。
決まった型を守ることではなく、自分に最も合ったかたちを探すことをぜひ大切にしてください。